KRK

バーフバリ 王の凱旋 ≪完全版【オリジナル・テルグ語版】≫のKRKのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

1作目よりもさらに女が強くてよかった。ところどころ様子がおかしくて笑ってしまうのだけど、その荒唐無稽さもちょうどいい。『RRR』よりはこっちのほうが全然好きだ。戦闘シーンが一番眠くなるという不思議な映画だったけど、それでこそ個を埋没させるという戦争の特色をうまく描いているというか、単純なヒーロー作品として仕立てられていないところに好感を持った。ドラマパートが圧倒的におもしろかった。キャラクターの設定も、台詞回しもうまい。一番唸ったのは、クンタラの王妃デーヴァセーナを、本人の意思など意にも介さず、バーフバリへの対抗心から自国の妃として迎えようと画策するバラーラデーヴァに、「女性を物のように扱う物言いはいかがなものか」と苦言を呈した家臣を、バラーラデーヴァの母シヴァガミが「何が悪いの」と即座に一蹴したシーンだった。シヴァガミのその台詞は、そこだけならけっして同意できるものではないのだが、それまでのシヴァガミやデーヴァセーナの強さを全面に出した描写を見ていれば、けっしてこの作品が女性を物としてあつかうことを肯定しようとはしていないことがわかる。実子バラーラデーヴァではなく甥のバーフバリを王に選んだことに対して、シヴァガミがバラーラデーヴァに申し訳なさをおぼえているシーンが前にあるだけに、バラーラデーヴァの願いを叶えてやりたいとシヴァガミが思うのがけっして不自然ではないこと、そのシヴァガミの甘さこそが、その後王国を危機に陥らせる伏線になっていることまで含めて、とにかくうまいなあと唸るしかなかった。家臣の台詞自体は、なくても話の大筋に影響はなかったはずなのに、あえて入れつつ、それを単純に「今どきの価値観に配慮した」という目配せで終わらせず、きちんとキャラクターの心情と紐づいたものとして回収されていたのが鮮やかだったなあと思う。

バーフバリが宮殿を追放されて以降のシーンはどうもイエスが重なって見えて仕方がなかったのだけど、どこまで意図されたものだったのだろう。私はどうしたって欧米の価値観に影響されて育ってきたから、馴染みのあるモチーフに引き寄せて考えてしまうけど、インドと欧米の距離感がよくわからないなあと思いながら観ていた。
KRK

KRK