私はこれを観ずしてハマグチェを観ている気になっていたのかと思ってしまうくらいにハマグチェ過ぎてビビる（勿論逆だが）。そりゃドライヤーみたいな話にブレッソンみたいな撮り方なんだろうけど、やっぱり『PASSION』の発話の仕方なんてまんまこれだろうし『親密さ』の夜や演劇部分に近しい雰囲気がある、森口瑤子はもう河井青葉にしか見えない。人物を横に配置しながらそれぞれの埋めようのない縦の関係性を、高低差を描く試み、愛だなんだを口実にしながらも結局はそこが揃わないが故に交渉は決裂していく。2階で別れ話をした後に1階の自室に戻りふと上を見上げる男、上昇志向と安定志向とがようやく交わう先に新しい可能性が提示され薄くて厚い他者との壁が突破される。あまりに暗いライティング、そこから醸し出される『接吻』の小池栄子同等の不穏さや緊張感があるが、作品自体の研ぎ澄まされ方はこちらに分がある。わざわざ夜道を車で追っかけて来てクッソ性格悪い捨て台詞吐いて去っていく中村トオルに笑う。これはハマグチェ作品を語るうえでもちゃんと容易にアクセス出来るようにしなきゃいけないのでは…めっちゃ面白い。
