湯っ子

バーニング 劇場版の湯っ子のレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
5.0
再投稿。とても好きで、何度も観ている作品。
よくわからないままなのだけど。
ここのところ、同じく村上春樹原作「ドライブ・マイ・カー」がタイムラインを賑わせていることと、つい先日、この「バーニング」の原作「納谷を焼く」を読んだことで、ふと思いついた。

あくまでも私の勝手な想像なんだけども。
「バーニング」のジョンスは作家志望。最後の方で、彼が何かを書いていたシーンがある。それが「納谷を焼く」だったら面白いなと思った。
私は、「納谷を焼く」はつい最近読んだ。村上春樹は、好きな人と苦手な人がはっきり別れる作家だと思うけど、私は後者。
10代の頃に「羊三部作」を読んだ時点でダメだった。乾いた雰囲気、読みやすい文体、お洒落なアイテムなどはじゅうぶんに魅力的なんだけど、主人公ひいては作家本人が、自らその全てに執着はありませんよ、という感じが鼻についた。女にもそんなに興味ないんだけど、なんかあっちから寄ってくるからデートもするしセックスもしますけど、それが何か?みたいな…ファンの方、気を悪くしたらごめんなさい。
で、「バーニング」のジョンスに話を戻すと、彼はヘミに対する執着や、ベンに対する嫉妬など、自身がとらわれた感情を燃やし尽くしたかった。だから、そういった激しい感情を持たない男を主人公にして「納谷を焼く」を書いた。だから、その後に続くシーンは、ジョンスの心の中のこと。ベンを殺して燃やして、ついでに自分の衣類も全部燃やす。これでジョンスは古い自分をも殺して、新しい自分として生まれ変わったのではないだろうか。
この映画を語る時、主人公ジョンスを「信用できない語り手」と考えたことはあったけれども、「納谷を焼く」の主人公もまた、「信用できない語り手」だったのではないか、と思った。
こんな風に、初めて観た時から何度もこの映画のことを考え、想像を巡らせることができるこの作品は、やはり最高の映画なのだと思う。
苦手ではあるけど、やはり村上春樹は偉大な作家だし、彼のこの短編から映画「バーニング」を作り上げたイ・チャンドンも偉大な監督だ。
この作品は、彼らの才能が素晴らしい科学変化を生んだ結果なのは間違いない。

「ドライブ・マイ・カー」は、原作を読んだことはないし、濱口龍介監督作品はまだ未鑑賞。
信頼しているレビュアーさんたちが絶賛している作品なので、どんな科学変化が起こっているのか、ものすごく楽しみで、うずうずしている。
湯っ子

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