Automne

バーニング 劇場版のAutomneのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.2
村上春樹のフォーマットにイチャンドンの狂気性とブルーワーカー要素が加わり、高度なメタファーとサスペンス性で魅せてくれた怪作。

ある種前半の三角関係とかはあーはいはいって感じだったし、村上春樹自体が"平成の最新"感があって"令和じゃない"気がする。あくまで感覚でしかないけど。
けれど後半にかけてのサスペンス性が前半の淡々とした演出の味として活きてくるので、みるみるマジックがかかっていったという印象。
バーニングというタイトルも炎のモチーフも好き。たくさん見る夢の暗喩加減も良い。

村上春樹は新海誠がフォロワーだしラノベの走りでもあるように、童貞をいかに心地良くさせるか、そのためにどういう都合の良い女を作り出すか、というところに重きが置かれているので正直あんまり好きではなくて(神話的な女すぎて人物に血が通ってない)、イチャンドンだから見たのだけど、主人公は村上春樹に合わせて小説家である必然性はまったくなかったし、ブルーワーカー貧困労働者のまま導線を引いたシナリオでイチャンドンの描く現代韓国をもうちょい見たかった。

結局表層のモチーフは小説家志望&金持ちおじさんでしかなくて「まーた村上春樹がひとりで頭の中で人形劇やってら」と思ってしまうので良くない。そこに都合の良い美人でなぜか主人公のことが好きな女性が登場するので、人間性の真に迫ることができず抒情性に欠けるためインテリ要素でメタってイキってカバーするしかない。なんだかこの辺の使い古されたフォーマットはほんとに食傷気味で新しさや斬新さにかけるし、新海誠と村上春樹論?みたいなネットで見たやつで「物語の薄さを誤魔化すためにメタファーや別世界(もう一層のレイヤー)を使いがち」と言われていてその気はあった。お笑いで言うなれば“シュールを盾に客から逃げたジャルジャル”と同義。

それでもイチャンドンの映画的ショットはバチバチに炸裂していて良かった。大麻chillの自然の感じや、感性的なモチーフの連続、そして燃えさかる炎に映し出されたオレンジの肌、服を脱ぐ/燃やすの繰り返されるイメージ。
ドライブマイカーに次ぐ村上春樹映像化の到達点。良作です◎
Automne

Automne