O次郎

ファイティン!のO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

ファイティン!(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

『犯罪都市』にてその巨躯を生かした見事な体裁きの骨太アクションを見せつけてくれたマ=ドンソク主演の、アームレスリングを題材としたハートフルヒューマンドラマ。

作品内でも言及されている90年代のスタちゃん主演作『オーバー・ザ・トップ』は同じアームレスリング題材の、一度は家庭を捨てた男とその息子との絆の再生を描く血縁の物語であったが、本作は主人公の義理の妹とその子ども、そして弟分との出会いと生活を通して、捨て鉢だった中年男が鮮やかに活力を取り戻すストーリーに仕上がっている。
特に作品序盤から中盤にかけて、自分の縁者である妹親子に寄り添いたいのに尻込みしてしまう巨体のドンソクがなんとも微笑ましく可愛らしい。

冒頭、アメリカでクラブの用心棒をしている主人公。オーナーには喧嘩の腕だけだと軽んじられていたところを、たまたま賭けのアームレスリングで凄腕を見せつけて周囲を唖然とさせる、ベタながら人物紹介としてうってつけの作り。
クォン=ユル演じる弟分が、主人公を売り込むプロモーター気取りのお調子者で、名作バイオレンス漫画『北斗の拳』のバットのようでなんともイイ具合のコメディリリーフ。
余談ながら、アジア系ゆえに差別的に見られて八百長の濡れ衣を着せられ、アームレスリング業界から排除された過去...という設定がなんともリアル。

数十年ぶりに母国である韓国に帰り、弟分から妹の存在を知らされる。
自宅を尋ねようとするも決心がつかず、妹の子どもから逃げてキョロキョロしたり、妹が借金しているチンピラたちを追い払ったりと、なかなかのコミカルな足長オジサンぶり。
それと好対照にアームレスリングのシーンではあのコワモテの顔が画面いっぱいの大迫力でその力感に大いに説得力があり、湯気が立ち上る...。
現役の曙さんの横綱土俵入りでの眼光鋭いせり上がりの気迫を想起させられた次第。

途中、妹やその息子娘、弟分と仲違いしながらも見事に復縁し、彼らが見守る中で国内大会を制覇する。決勝で相手と互いに阿修羅の如き形相を見せながらも、会場に駆け付けた「家族」の姿を目にして微笑み、そこから驚異の巻き返しを見せるクライマックスは見事の一言。
彼ら「家族」との絆を「手のひら」での触れ合いに絡めて回想シーンでオーバーラップさせつつ、その力で勝利をつかみ取るシーンは涙無しでは見られない。
...Zガンダムのウェイブライダー突撃か。

韓国のトレンディ映画にしては流血シーンが少なく程度も抑えめであり、上述のようにハートフルな内容となっているので、アクションファンならずとも万人に進めたい秀作。
O次郎

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