タケオ

セス・ローゲンのヒラリティー・フォー・チャリティーのタケオのレビュー・感想・評価

3.7
 尿道でハッパをキメたまま運転していたせいで、大事故を起こし地獄へと堕ちてしまったセス•ローゲンは、悪魔(アイク•バリンホルツ)に『人生はノー・リターン 〜僕とオカン、涙の3000マイル〜』(12年)を酷評された挙句、永遠の苦しみまで宣告されてしまう。もう1度生き返るチャンスをくれと懇願するセス•ローゲンに悪魔が出した条件、それは「チャリティ活動」を行うことだった。地上に戻り、さっそく「チャリティ活動」を開始するセス•ローゲン。果たして、無事成功させることができるのか••••?
 というていで始まる本作だが、登場するコメディアンの顔ぶれたるや本当に錚々たるものである。クレイグ•ロビンソン、ティファニー・ハディッシュ、ジョン•レイムニー、サラ・シルバーマン、マイケル•チェ、チェルシー・ペレッティ、サシャ•バロン•コーエンといった大人気コメディアンたちが、ハッパネタから人種ネタから下ネタまで、ありとあらゆるブラック•ジョークをぶちかます。あまりにも破天荒なネタの数々に、「本当にこれはアルツハイマーの支援を目的としたチャリティ•ライブなのか?」と疑いたくなるほどである。極めつけは、超絶不謹慎SFアニメ『リック•アンド•モーティ』(13年〜)の監督ジャスティン•ロイランドによる短編アニメーションだ。なんとその内容は、幼稚園児が考えたかのような正真正銘ただの下半身ネタなのである。正気とは思えないが、それがジャスティン•ロイランドの芸風なのだから仕方ない。またコメディアン以外にも、ジェフ•ゴールドブラムや『セサミストリート』(69年〜)のカーミットなど、スペシャル•ゲストも非常に豪華だ。
 セス•ローゲンがチャリティー活劇を行うのは、実は今回が初めてというわけではない。彼は2012年から毎年、アルツハイマーの研究や支援を目的としたヒラリティー•フォー•チャリティ(HFC)を開催している。というのも、セス•ローゲンの妻ローレン•ミラーの母親、つまり彼の義母アデル•ミラー自身が、重度のアルツハイマーを患っているからだ。本作の終盤でもセス•ローゲンは、ローレン•ミラーとともにアデルについてのスピーチを披露している。アルツハイマーを患うアデルとの生活や、HFCの意義についてを真剣に語る姿は本当に感動的だ。
 全編ふざけっぱなしの破天荒なチャリティ•ライブではあるが、大事な場面ではガラリとトーンを変えるなど、構成自体はしっかりとメリハリが効いている。肥満で髭モジャでハッパが大好きというチャランポランなキャラクターを売りとしているセス•ローゲンだが、なんだかんだで根は真面目な人なのだ。過激かつ不謹慎なギャグを扱うコメディアンほど、常識や教養があり倫理的な線引きがしっかりできていなければならない。当たり前のことではあるが、意外と勘違いしている方が多いようにも思う今日この頃である。本作のようなチャリティ•ライブを鑑賞すると、改めてアメリカのスタンダップ•コメディアンたちの実力を思い知らされる。やはり笑いにはインテリジェンスが必要なのだ。是非日本のお笑い芸人たちにも見習ってもらいたいものである。
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