Ginny

ジュディ 虹の彼方にのGinnyのレビュー・感想・評価

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)
3.0
レニーの演技が見たくて鑑賞。
ジュディガーランドの演技は未見の人間ですが、全盛期に大人の都合でドラッグ漬けにされていたという不遇は耳にしたことがありました。

ロンドンのナイトショーで歌う初日の様子は、辻村深月『東京會舘とわたし』の越路吹雪が思い起こされました。
舞台に立つ直前の袖で不安定であってもひとたび舞台に立てばそれまでの様子は毛ほども見せず堂々と歌いきる。まぁその後はそうではなかったのですが。

弱みを見せられない、強くいなければいけない、舞台に立つ人というのは大変なのだとしみじみ思いました。
権力を持った大人が年端も行かない若者に貴方のためよとマインドコントロールじみたことを裏でしようとも、華やかな部分だけを世間には見せ騙す。
心細い女の子に背負わせるものではないものを背負わせ続け、無理がたたって爆発した時の粗暴な粗相は彼女本人のせいにされる不条理。
積もり積もった負担は無視され、見世物小屋かのように人として見られない。

このお話の中のファンとの交流や、合唱の様子が真実なのかわからないですが、そうであってほしいと願います。

舞台に立つまで不安なのって本当なんだ、と改めて気付かされました。自分の好きなアーティスト達もそう言ってましたが、ライブで見れる姿は満面の笑顔なので本当に?いつも元気をもらってるその笑顔からは半ば信じられないなぁなんて感じてました。
ライブはただ見に行くのではなく、観客もその場の空気感を一緒に作り上げるものとは常々思っているのですが、観客の盛り上がりの様子でアーティストの気持ちも変わるというのは先日Perfumeのライブを2日連続で見に行った時、痛感しました。1日目と2日目の場内の盛り上がりや一体感、メンバーの様子も違っていたから。

だから、いくらアーティストのコンディションが悪いとはいえ(泥酔などパフォーマンスにあまりにも影響してるのは良くないけれど)、ブーイングや物を投げる行為はとてもショッキングだし傷つくことだと思うのでやめてほしいな、と。
昔は昔でその理解が行き届いてなかったかもですがこれからは変わるといいな。

素敵なパフォーマンスを見ることができる機会があって、目の前で披露してもらうのはとても嬉しいけれど、私が大好きなアーティストの人たちに望むことは、貴方達が笑顔で幸せで毎日過ごしてこれからも幸せな時を生きてくれることが何よりなので、公演が延期や中止になったり、休むのは悲しくても寂しくても平気です。
海外アーティストが健康優先で公演をキャンセルするのはウェルカムだと思ってます。

自分を大切に、自分を愛する。
そのメッセージがあり、それに呼応するような曲もあり良いなと思いましたが、終わり方が唐突と感じてしまったのと、伝記映画は必ず終わりに文章の説明が出るなと興醒めしてしまいました…。

レニーの演技は歌がとっても素晴らしく、シカゴの時と声量や声のトーンも違っていて圧巻。
表情の演技も良かったです。

才能ある人に、遠慮なくズケズケ踏み込める人ってやっぱ怪しいし無責任だと思った。
普通は適切な距離感を持って接する。
だって、いくら心配でも相手に対して責任が持てないなら入り込み過ぎて相手に期待させることはできないから。無責任に甘い汁だけ吸いたいから利用するつもりで近づくんだろうけど、それでもその一時的な優しさや甘い言葉が疲れた人にはしみるんだろうか。
素晴らしい才能を持つ人が不本意な形で不運な目に遭うのが悲しいのでそういうのが減ることを願ってやまない。
Ginny

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