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幸福なラザロのtomひでのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.0
なかなか良かった。
イタリア山間部タバコ農園を淡々と描いた前半と街に移った後半で映画は綺麗に分かれる。リアルな前半とファンタジーな後半。リアルとファンタジーが微細に交差する不思議な映画。個人的には農園を丁寧描いた前半がとても好き。

この映画には音楽が殆どない。中盤にピアノ曲が入るのと教会のオルガン曲くらい。しかもオルガン曲は登場人物が実際に弾いているので、映画音楽としての曲挿入は線路上を歩く2人の背後に流れるピアノ曲くらい。そして教会のオルガン曲は映画の展開上とても意味があり、殆ど映画音楽を入れなかった仕掛けはとても効果的。

狼に食われなかったラザロ、善人の匂い、搾取される暮らしと搾取されない暮らし、ラザロを傷つける街の人々、狼の疾走。観終えたあとは様々なイメージからの深い余韻に襲われる。

狼が無垢の象徴であるならその路上疾走は心痛くなる。
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