140字プロレス鶴見辰吾ジラ

COLD WAR あの歌、2つの心の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
3.6
【教会】

絵画のような切り取られた冒頭から絵画のように切り取られたラストと美的センスに溜息が出る。ラストの行動まで見てしまうとエモさのある恋愛モノをこのご時世にモノクロで見せます!というあざとさを感じてしまうものの、モノクロだからこそ切り取られたヒロインの美貌に釘付けになり、明らかに周りの空間から浮いて見える。音楽の美麗さと一糸乱れぬ舞踊のエネルギーは独特で印象的。ポーランドという歴史の陰鬱性を纏った舞台から冷戦により「心」を分断されなかった境遇と芸術家の嵯峨の切なさ。恋愛模様は切り取られたアルバムのような進行がゆえに音楽と絵だけでは退屈を感じてしまうものの、俳句の切れ字のようにエモさを各自補う教養も大事なのだと痛感した。ラストカットの2人の行方を追わずに風にたなびく田園風景を見せるというのが見事であると言う他ない。