ナチスに侵略され、ソ連に占拠されたボーランドだからこその雰囲気が秀逸である。雪が残った泥濘道、爆撃を受けた教会、かつての貴族屋敷の廃墟などモノクロの美しさが遺憾なく発揮される。ストーリー的には、もっと国家や体制に翻弄されるのかと思っていたが、二人の愛と情が主軸となって予測できない方向へと進む。ズーラを追ってヴィクトルが逮捕覚悟で、祖国に戻った時の照れくさそうな顔は忘れられない。それにしても、舞踊団の合唱の美しさは、今も頭の中で響き渡っている。最後に向こう側へ行った二人は、何処へ行き着くのだろう。
