ユカートマン

ブラック・クランズマンのユカートマンのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.7
コメディだと思って観に行ったら大きく予想を裏切られた。公民権運動とベトナム戦争を経て、世間の有色人種への眼差しが転換期を迎えていたコロラドの田舎町で黒人として初めて警官として採用された男が粗悪なレッドネックになりすましてKKKと九ヶ月間接触して潜入捜査していた嘘みたいな実話。もちろん肌が黒い彼が直接KKKのメンバーたちと接触できる訳がないので電話を使うが、黒人と白人は英語の喋り方が違う。彼は育ちがいいので完璧な白人英語を喋れる。また、直接彼らに接触するときは、相棒のユダヤ系白人の同僚を使うのだが、彼自身もこの捜査を通してユダヤ人としてのアイデンティティを再認識していく。そして、ブラックパンサー党のような黒人たちの学生団体も監視対象となり、そこにも潜入することになった主人公ロンは素性を隠し、幹部の女性と仲を深めていく…というお話。

実話に基づくとは言えドキュメンタリーではないので、娯楽映画ではあるものの、黒人たちに代弁させるスピーチは思わずその事実を忘れさせるほどのエグさがあった。野蛮人(黒人)をやっつけるターザンを応援していた少年時代の自分をナチを応援するユダヤ人少年に例えて反省する指導者や、1917年のテキサスで冤罪になった知的障害者の黒人少年を見世物のように街中引き摺り回して睾丸を切って火あぶりにして殺す話。いや、大げさだろwと思うかもしれないが、黒人をレジャー感覚で殺して写真を撮ってポストカードにする風習があったのは、本当の話。南部連合の旗を見たときにナチスの旗を見たときのような恐怖感を覚える日本人はどれぐらいいるだろうか。そして最後に「黒人の美は黒人が定義してやる」(=黒い肌と分厚い唇と広がたった鼻は美しい、白人に憧れるな)というセリフが素敵で印象的だったが、我々アジア人にもその意識が必要ではないだろうか。(ハーフ顔がトレンドの日本、整形大国の韓国。どちらも見ていて痛々しいものがある。)
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