いののん

ブラック・クランズマンのいののんのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.8
スパイク・リーは怒っている。マジギレしている。なぜ、40年以上経っても変わらないのか、なぜ変われないのかと、怒っている。重い石を投げつけてくる。投げかけられた問いがとても重くて、その問いを突きつけられて、私は今、うろたえている。一緒に怒る側にまわることができない。一緒に怒るのはたぶん簡単なことだ。でもそれでは、自分を安全地帯においた、お客さんになってしまう。それはいやだな。きっと、そういうことじゃない。だから、困っている。


予告篇からは、ユーモアが散りばめられたエンターテインメント作品という印象を受けたが、私の理解が浅いからだと思うけど、とてもエンターテインメントと受け取ることができず、出てくる人たち(潜入先の人たち)をみていたら、本当に気持ちが悪くなってしまった。胸くそ悪くて、気持ちが悪い。下手なホラーよりよほど怖ろしい。あんな人たちを潜入捜査したら、どうやって自分の心と、折り合いをつけていくのだろうか。心の平穏を保つことは、到底できないであろう。


あの時と、今とは、なんも変わってない。そのことに監督は怒っている。絶望しそうになっている。それでも。ジョン・デヴィッド・ワシントンとアダム・ドライバーが抱擁すること、他の仲間も一緒に健闘を讃え合うこと、そこに希望がある。そして、ジョン・デヴィッド・ワシントンが3人で写真を撮った際の行動。自分から手を伸ばすこと。自分から境界線を越えていくこと。越境すること。そこにも、希望がある。


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*『アイ・トーニャ』に出てきたヤバい奴(ポール・ウォルター・ハウザー)は、ここでもやはり激ヤバだった。
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