ゆーり

存在のない子供たちのゆーりのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
まだまだ子供であるゼインが、裁判を起こし、生みの親を訴えた。
その理由は「僕を生んだ罪」で、とのこと。
 
中東のかなりの貧困層に生まれたゼインは、生活のために朝から晩まで両親に働かされている。
より幼い兄弟たちも同様。
学校にも行かせてもらえず、出生届も出されていないし、法的には社会に存在すらしていない子供たち。
そんな状況下でも、ゼインは大好きな妹と懸命に生きていた。
 
しかし、妹が11歳で初潮を迎えたことに気づくと、ゼインは真っ青になり、なんとかその妹を大人たちから遠ざけようと必死だった。
目の色を変えて妹を見る大人たち、ゼインの努力もむなしく、両親によって強制的に近所のオヤジと結婚をさせられ、その代わり鶏をもらった。
 
結婚という名の人身売買である。生まれてきた子供たちは親を選ぶ権利はない。
明らかに子供を育てる資格も能力のない大人たちが、次々と子供を作っては産み落とし、その子供を家畜のように育てている。
 
ゼインはなんとかその生活から脱出したかった。
助けを求められる大人もおらず、残酷な世の中で必死に生きようとするゼイン。
酷い環境の中でも、周囲の人間には優しさを持つゼイン。汚い大人たちが作った世界で、ゼインが取った行動が・・・
 
とても重たかったけど、かなりリアルで・・・
ゼインの弁護士役の女性が、実はこの映画の監督であると知って驚きました。
また、ゼイン自身も他の役者も、この映画と似たような境遇で生活をしていた現地の素人さんとのことです。
なので、この映画はドキュメンタリーのように感じるくらい、役者の演技や演出がリアルなのです。
実際、この撮影をするにあたって、役者が途中で不法滞在で逮捕されたり、なかなか困難だったようです。
 
裁判では親は親の苦しみを訴えている様子があります。
しかし、それ以上に苦しくて辛い状況に立たされているのは無力な子供たちです。
 
ゼインは栄養が不足している関係で、実際の年齢よりかなりか細く小さな子供です。
それでも力強くなんとか生きようとしている姿と、おかれている環境に対する憤りを感じました。
 
どんな人間でも親になれてしまうし、逆にどんなにすばらしい人でも親になることが出来ない人だっている。
 
とても複雑な心境でこの映画をこのタイミングで観れたのはよかった。
親の責任とは何かを考えさせられました。
ゆーり

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