カタクチイワシ映画レビュー

存在のない子供たちのカタクチイワシ映画レビューのネタバレレビュー・内容・結末

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

中東レバノン、ベイルート。少年刑務所に収監中の12歳(推定)の少年ゼインが訴えた相手は実の両親だった。何の罪で?と裁判官に問われ、ゼインは答える。『ー僕を産んだ罪』。


いや〜キツいっす。↑のはオープニングの場面なんですけどのっけから凹みました。子供になんちゅうこと言わせてんだよ…、ってかなりゲンナリさせられます。

※若干のストーリーのネタバレがあります



この映画、何故その様な事になったのかを主人公ゼインを通して見ていく訳ですがそれが辛いのなんの。シリア難民の子として産まれ、あまりの極貧生活で出生届及びその他自身に関する証明書がない為にIDもない。だから真っ当に働くこともできず収入も少ない。でもゼインは稼がなければ家族が生きていけないんで一生懸命働くんです(っていうかこんな小さい子供達が路上でナニやらを売って金銭を稼いでる時点でもう、ね…)。

しかし遂に家賃の支払いさえ苦しくなり、両親は娘(ゼインの妹)をアパートのオーナーに嫁がせます。11かそこらの子供をですよ? この辺は絶句するしかありませんでした。ゼインは必死で止めようとしますがそれも叶わず、挙句両親から『お前なんか産まれてこなければよかった』とまで言われる始末。実の親から存在を否定された子供の気持ちなんて、想像もできませんがな…。

だいぶすっ飛ばしますがゼインは後に少年刑務所に入ります。見てると、まだそっちの方が待遇がいいんですよね。ご飯も食べれるし多少狭いけど寝床もある。家族の為に働き、妹を守ろうとし、家を飛び出し人を傷付け捕まった結果、行き着いた刑務所が家よりも好環境なんて、こんな悲しいことありますかね?

一応最後は救いのあるラストになってはいますが、それでも心は晴れません。だって社会を変えていかない限り根本を解決出来ないし、まだあの刑務所には大勢のゼインがいるんですから。
子供が子供でいられる当たり前の権利を奪ってしまう様な社会にはしたくありませんね。


重いテーマを扱った映画ですが、見応え十分の傑作だと思います。見終えてもし重い気分になったら、この映画の試写会トークイベントを見てみて下さい。監督が家族と共に登壇しているんですが、娘さんのメイルーンちゃんが可愛らしくホッコリさせてくれますよ! 是非ともオススメです‼︎