HAYATO

存在のない子供たちのHAYATOのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.3
2024年23本目
レバノン映画初鑑賞
アラブ映画及び中東映画として史上最高の売り上げを記録し、第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品
レバノンの女性監督・ナディーン・ラバキーが、貧しさゆえに親からまともな愛情を受けることができずに生きる12歳の少年の絶望的な人生の道程を描いたヒューマンドラマ
両親が出生届を出さなかったため法的には社会に存在しない12歳の少年・ゼイン。ある日、大切な妹が強制結婚させられてしまい、悲しみと怒りに駆られたゼインは、家を飛び出す。
実際にシリア難民であった子役のゼイン・アル・ラフィーアが、主人公の少年・ゼインを演じており、ナチュラルでリアルな彼の見事な演技は、『誰も知らない』の柳楽優弥さんを彷彿とさせる。
子供が両親を「自分を産んだ罪」で訴える衝撃的なオープニングで幕を開け、そこから回想形式で綴られていく本作は、レバノンに蔓延る様々な問題に深く切り込んでおり、こんな地獄のような現実が本当に存在するのかと胸が苦しくなる。
家を飛び出したゼインが、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性・ラヒルと出会い、彼女の赤ん坊・ヨナスを世話しながら一緒に暮らす場面は、全編に渡って苦しい展開が続く本作の中で唯一「愛」を感じられるところだったかもしれない。
1人で面倒を見ることに限界を迎えてしまったゼインが、ヨナスを路上に捨てようとして思いとどまるシーンは、自分が憎んでいる両親と同じようなことをしているのではないかという葛藤が見えてものすごく辛かった。
本作で描かれたことは、遙か遠い世界での出来事ではなく、自分も同じ世界に生きているということを心に銘じておきたい。
「愛」は「子供の幸せ」にとって不可欠であることを痛感させられた。
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