雪洞

存在のない子供たちの雪洞のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
“世話をできないなら産むな”

そんな言葉を、誰に言われても耳が痛いが、子どもが大人に向けた言葉であることだと思うと心が痛い。

わずか12歳のゼインは、自分の両親をある罪で訴える。
それは彼を“産んだ”罪。
親を訴えるということ自体で驚きだが、その内容が、自分自身の存在について。
そのシーンを気に、ゼインが送ってきたそれまでの壮絶な人生の回想が始まる。

動き回らないように片足に鎖をつけられた幼子、嘘をついてもらった薬を砕いて、大人に売るクスリを作る子どもたち、学校も行けずに働く子。

そして、妹に起きる悲劇。

その地で当たり前のように行われていることが、家族にとっては生きるすべであり、側から見たら完全なる非道な悪事であるが、「かわいそう」、そんな一言をかけるには知らなさすぎる。

そうする親たちも、そうやって育てられ、生きてきた現実がある。
誰が悪いでもなく、その社会と現実がそうさせる。
”当たり前“すぎて当たり前ではないこともわからなくなるのかもしれない。
果たしてこの現実は、貧困だけが理由なのか、それとも無知なのか、無関心なのか。

幼子につけている足の枷がそれを表しているかのよう。
序盤にゼインの兄弟に枷がつけられているシーンがあるが、中盤では、ゼイン自身がある子どもに足枷をつける。
だめだと思いながらも葛藤し、つけてしまうが、悩んだ末に外しに戻るのである。

負の連鎖を、ゼインが断ち切った瞬間だったように感じた。
それは負の連鎖を断ち切ろうという一種の観客へのメッセージようにも。
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