うえびん

帰れない二人のうえびんのレビュー・感想・評価

帰れない二人(2018年製作の映画)
4.1
悠久の時と大地

中国って自然のスケールが大きい!広い!っていうのが第一印象。正に大河といった長江の流れ。大陸を縦断する車窓から望む大地。時が経っても変わらない雄大な自然、少しづつ変わる街並み、エピソードによって大きく変わってゆく人々の心。それぞれが、同じように丁寧に描かれていて、強く重い余韻を残してくれる。

物語は、2001年から2017年まで、16年という長いスパンで描かれる。2時間強の作品の中に、長い時間がしっかりと織り込まれている。気丈なチャオは、容易く涙を流さないからこそ、哀しみが強く感じられた。ビンも、裏社会で幅をきかせて虚勢を張りまくる時代から、徐々に墜ちてゆく様が胸に痛かった。最後も二人の物語はこの先も続いていくんだろうなぁと、余韻が残っていい。

この作品の前に観た『チィファの手紙』。同じ岩井監督(日本人)が撮った『ラストレター』。中国版と日本版を比べて、何となく“間”の違いのようなものを感じていた。それは、時間的な“間”じゃなくて、この作品から感じた空間的なの“間”の違いであったと気づいた。

空間、自然のスケールの違い。日本は内側に、繊細に見つめていって小さきものを愛でる。中国は外側に、果てしなく大きく広げてゆく。島と大陸、そんな自然観の違いがあるんじゃないかと思った。

作品の舞台を知って、中国のスケールを再確認しようとGoogle Mapを調べたら、中国国内は、ストリートビューが使えないのを初めて知った。数ヵ所のポイント、観光名所と思われる場所だけしか見れない。新疆ウイグル自治区は、ポイントも無い。

政治的にオープンでない国の情景がよく分かる貴重な作品です。
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