Ricola

帰れない二人のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

帰れない二人(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

中国の激動の歴史とともに、ある男女の運命の行方も描かれた壮大なラブストーリーである。
壮大というのは、中国の歴史や大地のみならず、恋人たちの愛の大きさに関しても言えることである。
年代記ともいえるこの作品の、軸を支えていたものはモチーフである。


1つ目のモチーフは火である。
彼らが吸うタバコや葉巻、火を跨ぐ儀式など、火に関連する行為が作中で見られる。
火は連帯感をもたらすものとして機能しているようだ。

そして乗り物はこの作品の構成を語る上で欠かせないモチーフである。
バス、船、バイク、列車など…。
何年か時が経つときの場面転換で、チャオはだいたい乗り物に乗っている。その際に場所だけではなく時間をも移動しているかのように提示してくる。

彼女の生き方が、変わりゆく街と重なる。
何もかも失い何としてでも生きてやるという強い思いをもちながらも、彼への変わらぬ愛を貫いて生きていく。

ダム建設のため水底に沈むことが決まっている町は、その運命に抗おうとも抗いきれない。船で移動する人たちの遠くを見つめる目。彼らは大荷物ですべてを持って住む場所をもとめて行く。感情移入しすぎていないカメラの眼差しが、彼らをただ見守る。

活火山の灰はきっと純白だとチャオは言う。
この発言はこの作品の原題にもなっている。火山が燃やすものは自身から溢れる産物だからだろうか。世の中がどれほど薄汚れてしまっても、地球の神秘の一つである火山が燃やし生み出す灰だけは汚れのない純白だと、彼女は信じたかったのかもしれない。
Ricola

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