かるまるこ

アップグレードのかるまるこのレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
3.7
代替可能な身体と代替不可能な心の傷。
AIの力を借り、高度にIT化された世界に容易に溶け込んでゆく身体と、かえって行き場を失う心…。

ベースはヴィジランテ映画だけどちゃんとSF。しかも取って付けたものでなく、SF要素をきっちりテーマにまで落とし込んでいるのは見事。

ちょっとしたCGと、役者のロボットっぽい演技と、あとはぐりんぐりん動くカメラで大体なんとかなるのでコスパも良い。最新作『透明人間』でもそうだったが、低予算で面白い物を作らせたらもうワネルの右に出る者はいないんじゃないかと思う。

冒頭でどれだけ敵の行いをヒドい!と思わせられるかが復讐譚の肝なのだが、今回それがかなりあっさりしていて前フリとしてあまり効いていないため、物語の推進力とカタルシスが弱くなってしまっているのが悔やまれる。
だが、従来のヴィジランテ映画にSF風味を付け、かつ物語にヒネりを加えるには、こういうインパクトのない出方になるのもやむなしか…。
かるまるこ

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