一人旅

アメリカン・アニマルズの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

バート・レイトン監督作。

大学図書館所蔵の希少な画集を盗み出すべく策を巡らせる大学生達の顛末を描いた犯罪映画。

2004年、アメリカ・ケンタッキー州の大学生4人組がトランシルヴァニア大学の図書館に所蔵されていた1,200万ドルもの価値がある希少な画集「アメリカの鳥類」を狙って強盗事件を引き起こした実際の出来事を、ドキュメンタリー界出身の新鋭:バート・レイトン監督が映画化した“青春クライムムービー”の快作となっています。

平凡で退屈なキャンパスライフと将来の人生に嫌気が差してきた大学生:ウォーレン&スペンサーが、二人の友人:エリック&チャズを仲間に引き入れて、トランシルヴァニア大学図書館所蔵の希少な画集を盗み出すべく入念な計画&準備の下、実行に移していく様子とその後に彼らが辿る末路を半ドキュメンタリー的に活写しています。

アッバス・キアロスタミの『クローズ・アップ』(90)のように、実際に事件を引き起こした犯人&被害者本人らが出演し、本人の口からインタビュー形式で語られる事件当時の回想が、役者の演じる“物語”と交互に映し出されていく二層構造が新鮮な驚きとなっています。加えて、時間と場所を軽々と飛び越える演出:登場人物の台詞が次のカットにシームレスに繋がっていく等―や第四の壁を破る演出:登場人物が観客に直接話しかける場面―といった、縛りのない自由な演出が随所に見られる快作となっています。

図書館内部の配置を示した模型の作成や、希少本保管室を管理している女性司書への対策、図書館からの逃走経路の確認、4人の役割分担と決行当日の各々の動きの確認、故売屋&鑑定士との事前&事後接触―と強盗を成功させるための入念な下準備がテンポよく描かれています。『レザボア・ドッグス』(91)や『オーシャンズ11』(01)といった犯罪映画を主人公らがお手本にしているのも特徴で、仲間同士を“色”で呼び合うレザボア式コードネームや、『オーシャンズ11』の主題歌として使用されたエルビス・プレスリー「A Little Less Conversation」をノリノリに流しながらの華麗な強盗妄想シーンにも惹き込まれます。

クライマックスの強盗決行シークエンスでは犯罪映画の醍醐味が十二分に発揮されています。“平凡な田舎の大学生が図書館から本を盗む”―という、文面だけでは地味な事件ですが、決行中に発生する想定外のトラブル(これも犯罪映画の付き物)が主人公らの焦りや不安、恐怖心理と相まってこの上ないスリルと緊張をもたらしています。
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