モラトリアムについて考えていた際にふとこの作品のことを思い出した。
「何者でもないことへの焦燥感」をこれでもかというほど描いた作品。退屈な日常に風穴を空けるために、犯罪映画の真似をし、仲間を集め、実際に犯罪を計画してしまう青年達の物語。
映画をイメージしてスタイリッシュに計画を進めていたイメージ映像と、実際に素人が図った犯行とのギャップが残酷に映し出されるシーン。イメージではスタンガンでスムーズに気絶させるはずだった司書を慣れない手つきで拘束し、「傷つけるつもりはないんだ、頼むから声を出さないでくれ」と今にも泣き出しそうな顔で懇願するシーンは非常に印象的であり、日常生活にいつだって付きまとう「理想と現実のギャップ」を表しているようでグロテスクとまで言えるほど心を抉られる。
僕のようなフィクションオタクやインターネットオタク、「何者かになりたいが、一歩踏み出すことが出来ずいつも焦燥感を抱えている人間」に刺さることは間違いない。