スワヒリ亭こゆう

アメリカン・アニマルズのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
2.0
本作の企画意図は大学生による強盗事件を犯人の証言を基に忠実に映画化する事でしょう。
実話に基づいた脚色ではなく、彼らの証言通りのストーリー構成にして尚且つ、彼ら犯人や家族などもインタビューという形で出演しています。

その企画自体は実際の犯人らに取材しないといけないし、かなり手間暇かけて作ってると思います。
ですがクライムムービーとしては物足りない。
観てて楽しくないし、実際の事件なので犯人が捕まるのは目に見えてます。
つまりどこかで失敗するんです。
強盗クライムムービーって大きく分けて二つあります。
一つは強盗はするんだけど、その後にトラブルが起こってしまい、それを楽しむタイプ。『レザボア・ドッグス』とか
もう一つは強盗の計画を楽しむタイプ。
成功するか?失敗するか?そのドキドキを楽しむタイプ。『オーシャン11』とか

で、本作は強盗の計画を楽しむタイプに該当するんです。終盤まで計画を詰めて詰めて犯行に及ぶ様を描いてます。
だけど致命的なのは本作が実話で登場人物たちが本人登場してインタビューに答えてしまってるという事です。
本作の結末は見えてないけど、強盗に成功して大金を手に入れていたら犯人が映画に出てくることはないですよね。
なので強盗は失敗したという事になるでしょう。
なので、成功するか?失敗するか?のドキドキ感を味わう事は出来ないです。
そこがこの映画の致命的欠陥だと思います。


正直、大した事件じゃないんですよ。
大学の高価な本を盗むなんて、素人くさいし、それを映画化しましたけど、他の人がスルーした事件なだけでショボい話です。


実話に拘るのはいいけど、それを他人が語っても面白くないという事をこの監督は分からないとダメです。
面白い話を他人にするのに実際に経験してるなら、そこまでディフォルメしなくても笑えるんです。だけど第三者が全く同じ話をしてもウケない。経験してないから、どうしても弱くなる。
それでみんな話に尾ひれをつけて話すんです。
なので、第三者の監督が本作を撮るなら少しは話に尾ひれをつけてやらないとウケないですね。


それにこの若者たちの話には女子が出てこない。
実際に仲のいい女子はいなかったんだと思うけど、クライムムービーには女子というかファムファタールがいないと話のエッセンスとして物足りないですね。
凄く味気ない映画になってるのはそのせいだと思います。


男がバカやる事の大半は女子ですよ。
人生を変えたいとか御託を並べてもカワイイ女子一人登場させた方がよっぽど説得力があります。


それと彼ら犯人グループ4人は特殊ですよね。
家庭的にも恵まれて大学にも行かせてもらっているのに、人生を変えたいとか言ってる。
甘い!
やってる事も考え方も全て甘い!
主人公らに共感も納得もできず、なんだかよく分からないショボいストーリーになっていて、大変不服に感じております。


そもそも犯罪者が犯罪録を書籍にして出版することってあるじゃないですか、僕はそれが大嫌いなんですよ。
犯罪してそれを更に金儲けの材料にするというのは不届き者にも程があります。
本作でも犯罪者が映画に出ますよね、出演料は払われるでしょう。それって被害者に対してあまりにも配慮が足りないと思ってしまいます。


世の中、勧善懲悪ではないのは解ってるつもりですが、そこに金が絡んでくるとどうも納得出来ないんですよね。