ゆずきよ

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のゆずきよのレビュー・感想・評価

3.5
過去鑑賞。少し長くなります。
タイトルに騙された。正直舐めてました。
わがままで偉そうな障害者とそれに振り回される健常者達の話。というと物凄く語弊はあるが、おおまかにはそんな所。
主人公は筋ジストロフィーを患っている。
筋ジストロフィーとは筋力が徐々に弱くなっていく病気で、筋力が弱くなるという事は、単純に歩けなくなったりするだけで無く心肺機能にも影響が出る。
心臓も肺も動かすためには筋肉が必要だからね。
つまりは命に関わる病気だって事。
残念ながら現在の医学では根治する方法は無く、対処療法しか無いらしい。
似た病気に筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気もあるが、これ以上は興味のある方が各自調べて下さい。
主人公はその病気のせいにより車椅子で生活していて、言い方が悪いかも知れないが、誰かの助けが無いと日常生活が難しい。それを最大限利用する。
彼は口が上手く、無茶な要求もするが、そこにはきちんと意図があり、精一杯生きようとしているのだ。
権利をフル活用しているとも解釈出来る。
何処までが実話なのかわからないが、気になる点がある。
私も実は少しばかり医療や介護に携わる仕事をしているだが、利用者様には出来ればこの映画は観て欲しくない。
この映画に出ている登場人物の多くはボランティアで、好きでここに集まっている。
私達は仕事で彼等と関わり、もちろん最大限叶えられる事は手伝いたいと思っているが、一人一人にこんな要求をされたらたまったもんじゃない。
私達も抱えられるケースには限りがあるし、個々の生活もある。
それが出来ない人は仕事にすべきじゃないというのであれば、おそらく成り手は誰もいなくなるだろう。
彼は夢があって、素晴らしい人で、病気になった人が色々と諦めなければいけない中で希望となるだろう。
でもその中で、それを支える人々がいるという事を忘れないで欲しい。無償じゃ無くしている人達の事をだ。無償でやるのは個々の自由なので好きにすれば良い。
ただ仕事はそうはいかない。どれだけ合わなくても、相手が嫌でも、求められる限りは対応しなくてはならないのだ。
冷たい言い方だが、それには限界がある。
この映画はそこに対してのリスペクトが足りないと感じた。
むしろ医療が悪という印象さえ与えかねないのが気になる。
無論、選択の自由はあって然るべきだし、それを与えないのはナンセンスなのだが、だからってなんでもかんでも許される訳では無いし、皆んながそれぞれ違ったアプローチで彼のためを思って行動しているのだという事を改めて明記させて頂きたい。
その中で、高畑充希の動きも気になった。
詳細は実際に映画で確認して欲しいが、あれは完全に興味本位では無かろうか。思わせぶりな態度は時に人を深く傷付ける。
もしかするとそこも含めて大泉洋扮する主人公の策略なのかも知れないが、私には少しだけ気になった。
色々と言いましたが、映画自体はとても面白く、合う合わないはあれど勉強にはなる一作。
俳優陣の名演技も含めて是非一度ご覧になってみて下さい。
ゆずきよ

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