えむえすぷらす

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

5.0
いい意味で予告編詐欺。予告編で想像したありがちな展開を片っ端から外して行く。これは日々生きる事が戦いだった人とその彼と一緒に戦い抜いた人たちの生の記録。

話の行方、分かってると我々は思いこんでいる。そんな簡単には負けない。逆に負かしてやるぞという力強い主人公の意思が何度も彼を死地から回復させた。そういう彼の物語だからか脚本はしっかり考えて見せ方を工夫している。エンドロールの直前、どうするのかなと思ったら意外な所から全てを語って見せた。いい映画化だったと思います。

朝日新聞WebRONZA(有料)に渡辺一史さんインタビュー記事が載っていましたが、本作について主人公がどんな魅力、引力、磁力を持った人物だったかよく描けていると誉めていた。この人自身は映画だと描かれなかった最後の2年間取材に行き自然に鹿ボラとなって亡くなる日にも駆け付けていた。当事者の一人でもあった。ノンフィクション原作はほぼ出来ていた。本人に見せるはずだった。それが一歩違いで間に合わず彼の死をエピローグで加える事になった。刊行に向けては出てくる方々、障害者本人の同意を得るのに難航したそうで映画化では製作陣が注意を払われたのではないかと思う。きつい人間関係見たい人は本書を読めばいい。映画でそういう部分を割愛して主人公に絞りその死自体は描かなかったのは正しい判断だと思う。