【第71回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品】
メキシコの鬼才ヤン・ゴンザレス監督作品。シッチェス映画祭のコンペにも出品されている…ということはどんな作品か大体分かるよね。
すごく楽しみにしていたのにちょっとだけ上映して終わってしまって悔しかった。やっと観られた!その期待に応える、いや、期待の斜め上を行く奇作だった。
1979年、ゲイポルノを制作するレズビアンのアンだが、その周辺で次々と俳優が殺されていってしまう…
カラフルでポルノグラフィックなノワールで、一応の解決はしたように思える。のだが、どう考えてもおかしいところがかなりある。
まずリバイバル上映!といって流れるあれはどう考えても『ゲイ殺し』より後に作られなきゃおかしい。
そして、アンが映画を褒められて「ルイスのおかげよ」と言うと「ルイス?」と言う。あんなにソロ字幕で出てるのに知らないのはおかしい。
基本的にアンの視点で進むのだが、この人は本当のことを語っているのだろうか?あの殺人鬼というのは本当は…?と深読みを誘われる。
かつてレズビアンだったパトリシア・ハイスミスは『太陽がいっぱい』『見知らぬ乗客』の原作で「性欲」を「殺意」に置き換えて書いた。基本的にはそれと同じことをやっている気がする。
だって終始黒づくめの服を着ているのってアンじゃない?
そんな一筋縄ではいかないストーリーはもちろん、鮮烈なゲイポルノ描写、そしてジャッロ要素を存分にまぶしても破綻しない作劇が素晴らしい。単に画面を眺めるだけでも口あんぐりだと思うよ。
とにかく「怪作」という言葉はこの映画のためにあるのではないかと思える作品。規格外すぎる。大好きでした。