木蘭

アイカの木蘭のレビュー・感想・評価

アイカ(2018年製作の映画)
3.5
 絶望という名の列車に揺られる114分。
 モスクワで不法労働者として暮らすキルギス人女性アイカの地獄の様な一週間を淡々と描いた作品。

 父親の居ない子供を産み落とした病院から逃げ出す所からして地獄だが、止まらない子宮からの出血でボロボロの身体を引きずりながら、警察や借金取りから逃げ、職探しの為に大雪のモスクワを彷徨い歩く姿を延々と見せられる。辛い。
 貧乏子だくさんなキルギスの生活が嫌で、チャンスをつかむべく借金してモスクワに出たけれど、仕事は上手くいかず、望まぬ妊娠をしたあげくに仕事もビザも失い、給料は払われないは、借金の追い込みを掛けられるは、必死になればなるほど空回りしていく・・・これ以上無いという程、詰んだ状況は現実なんだと思うと、本当に辛い。

 この状況をドキュメンタリーの様にリアルに再現した主演のサマル・エスリャモワが、第71回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したのには納得。

 コレが彼女たちが置かれた現状であるわけだし、それをある種体感出来るのが映画の醍醐味でもあるのだが、ノンフィクションでは無くフィクションである以上は、何らかの物語の形に昇華しないで良い物だろうか・・・と疑問に感じてしまう気持ちも一方であるんだな。
 辛い、かわいそう・・・では、その先は?・・・それを提示するのも物語としての映画の魅力なのだから。
木蘭

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