Omizu

アイカのOmizuのレビュー・感想・評価

アイカ(2018年製作の映画)
4.0
【第71回カンヌ映画祭 女優賞】
カザフスタンのセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督作品。前作『トルパン』がカンヌ映画祭ある視点部門グランプリを受賞、本作はコンペに出品され女優賞を受賞した。日本ではフィルメックスで上映され最優秀作品賞を受賞したが劇場公開されなかった。

素晴らしい。キルギス人移民の女性アイカを主人公に、移民問題を切実に描き出している。

アップの手持ちカメラが多く、アイカの揺れ動くアイデンティティーと感情を見事に捉えている。

出産したものの、子供を置いて逃げ出してしまうアイカ。彼女には借金もあり育てられる環境にないのだ。

終盤アイカが告白するある事実、そしてその決断が哀しく痛々しい。もちろん彼女の決断に反発はあるだろうけど、こんな体験していたら限界になるのは仕方ないのかもしれないという説得力があった。

ざらついた質感の映像、そしてなにより主演女優の方が素晴らしい。体当たりという言葉では表せない見事な演技をみせていた。

カザフスタンにおけるロシアの影響力も背後にあり、より深いドラマになっていると思う。移民問題、性差別を含む社会の捻れをリアリティーたっぷりに描き出した傑作。
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