ta22ya

読まれなかった小説のta22yaのネタバレレビュー・内容・結末

読まれなかった小説(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

【卵・ミルク・蜂蜜】セミフ・カプランオール監督や数年前からのトルコ映画界の勢いが凄く!注目し、傑作雪の轍でパルムドーム受賞した監督。
写真家であった監督だが、チェーホフ
、ドストエフスキーなど映画より文学から影響を受けているそうです。

馴染みのない映画だとは思う。
【要点はわかりやすく、短く】skipもできるこのご時世では。
文学映画ともいえる。膨大な台詞の量。
トルコの田舎町の美しい自然の風景。 
淡々と流れる3時間の物語。

※※※大学を卒業し、小説を書き終え出資先を探し、久しぶりに故郷へ戻るシナン。彼は作家になるのが夢なのだ。

帰ってきた矢先、町の人から、父にお金をかした事を言われ知ってるか?と問われる…
教師である父は定年を控え、ギャンブル癖があり、どうやら町の人からはよく思われていないらしい。
借金も抱え電気は止まりもする…母親はいまでも子守のバイトをしている。
【わたしは今でも子守のバイトをしている。俺も子供の面倒をみている。と韻を踏んだようなセリフのかけ合い面白かったです。】
教員試験を受けるも、父のような姿になりたくないという反発、小さな町の平凡な者になりたくない!という青年の反骨心、まちの書店で同郷から尊敬する名の売れた作家と偶然?会う事に。
カフカやカミュの肖像画が貼られ作家が集まる書店はパリでゆうシェイクスピアカンパニーみたいな感じなのでは。

出版したい!という強い思いと、どうしたらいいかわからず…成功しているものに自分の知識をぶつけ、失礼な事を言ったり、追いかけたり、とにかく読んで欲しい! というシーンは夢ある人の青さが凄く痛い。 
田舎町でわかりあえる人がいないからこういう人に会うと分かり合ってほしいという思いが勝り募りますよね。

そのあと文学青年はちょっとした悪さをし、逃げるように街を疾走して息を殺して姿を隠すのだけど、ここのシーン凄く良かったです。この建物というかアート作品というか…不思議な物体なんぞや??? セットなのか?まちにあるのか…

エヘヘッという、ニヒルな笑いの父親の存在はハラハラドキドキさせます。

こんな父親でも、自然を愛し動物を愛し、話が面白く、恋に落ちた母は生まれ変わってもまた父を愛し結婚したいという。なんとも不思議で素敵なセリフ。

飼っている犬を秘かに売って資金を得たりとなんとか自費出版し、父のいる学校に持っていき、どうだ!と見せつけるつもりだったのか、ある父の姿をみて本の事にはふれず帰っていく…

母に本が完成した事を告げ、おめとう!自慢の息子よ!と褒められ【全ては母さんのおかげとサインを書いてあげるシナン】

そして兵役へ…

精悍な顔つきになり、久しぶりにまた家へ戻ると、雨漏りから本はカビていて、本どうだった?と聞くも、母や妹は忙しくて読んでないと…

どの位売れたか、置いてもらった書店で確認するも、本はしまわれ一冊も売れていない…

店の前にはあの作家の新作のポスターがゆらめく…

荒れ狂う海辺?を相変わらず下をみて歩くシナンの姿が切ない…

そして父との再会。

嘘だと思っていたが唯一の読者が嫌いである父であることを知る。
しかも何度も読み、地元新聞紙に載った切り抜きを綺麗に折って財布に入れておくという…

誰からも相手にされず孤独なシナンを包んだのは父だった。

祖父、父、僕
僕らは3人ともいびつなはみだしものだ…

孤独なものが肩を並べ分かり合えた時。長い長い時を超えて、父と子の歪みが消されていく。

掘っても水は出てこないと言われ町の人からは馬鹿にされるも、ずっと自分の信念を貫き井戸を掘り続けた父。
無理だと諦めたその井戸を現在シナンが肉体を使って掘っていく。
文学青年が兵役から勇ましくなりカラダを使う。
エンドロール…石に当たる音と尚も掘り続ける音。
父と子が分かり合えた瞬間…

感動しました!文学を観ているような〜
いまの田舎町を綺麗に切り取れる作家はヌリ・ビルゲ・ジェイランしかいないと思いました。
こういうのに出しがちな、酒やドラッグは出てこない。
携帯とかデジタルなものもほぼ出てこない。
田舎町の美しい風景と動物の音
ひたすら歩く青年や、日常会話に宗教についての話…

個人的に何故か好きなのは、雨に降られ濡れるんだけど、全く嫌な顔せず、顔や服を払わずそのままでいるのがなんだか外国感があって好きなんです笑

父と子のシンプルなストーリーです!
甥っ子との共同脚本。出演しています!
5時間を3時間に要約した脚本らしいです。

文学好きな人にもぜひぜひおすすめです。
ta22ya

ta22ya