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引っ越し大名!のQTakaのレビュー・感想・評価

引っ越し大名!(2019年製作の映画)
3.3
引っ越し大名! (2019)
監督:犬童一心

実に爽快で愉快なチャンバラ映画だった。
同時に、『武士』の生き様というテーマも有ったように思う。
その時代(江戸)、既に”戦士”としての役割を失った『武士』という存在が、どうなものであったのかを目の当たりにする映画でもあった。
『武士』が武士である為の生き方をこんなふうに表すのか、と思った。
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お国替えにあたり、減封を言い渡され、リストラされ、百姓となった同士達を迎えに行く場面が多くを物語っていたように思う。
武士が百姓になり、手付かずの谷を見事な棚田に開墾した、その田を前にしての言葉だ。
「ただ、この天の下、小さな己が生かされているのだと」
武士は、この時代のヒエラルキーの頂点に有って、民、百姓を従える存在であるのだが、こうして開墾された田の水面を前にすると、「ただ生かされている」と言う事に気付かされるのだろう。
そして、この田を開墾した武士達は、百姓になる事を決意していた。
ここに、『武士』とか『百姓』とかいう身分や地位のことは無い。
ここで、彼らは、一方は『武士』として生き、他方は『百姓』として生きる事を選ぶのだが、そこに有るのは「共に生きる」と言う事ではなかったか。
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新渡戸稲造の『武士道』に
「武士の美徳は、我が国の国民の一般的水準よりもはるかに高いものだった。太陽が昇る時、まずもっとも高い峰を朱に染め、次第に下の谷を照らすように、最初に武士道として結実した倫理体系は、時がたつにつれて大衆からの追随者を呼び込んだ。」
とある。
まさに、この映画は、そんな『武士道』の一面を表しているのではないだろうか。
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キャストが最高!
殿様の及川光博、槍を振り回す高橋一生、ヒロインの高畑充希、そして頼りの無い主役の星野源。
バイプレイヤー達も、きっちり顔を揃えている。
そして、あの歌と踊りだが、野村萬斎氏が携わっているという、なるほどの完璧さ。
史実から発想された物語だろうが、チャンバラ有り、踊り有り、そして武士から庶民まで、その時代を描ききっていた。
歴史エンターテインメントとして、最高に面白い一本だった。
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