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天国でまた会おうのボーのレビュー・感想・評価

天国でまた会おう(2017年製作の映画)
5.0
 素晴らしい映像化。エドゥアールの美的センスの表現として、当時フランス周辺で主流だった芸術表現を細かく取り入れた画面構成はまさに美術館。この美麗な画面と、戦場の泥と硝煙の対比がいっそ滑稽でさえある。
 窓ガラス等の映り込みを徹底的に駆使した映像が、定点カメラなのに多角的で動きがあって紙芝居を彷彿させる様も魅力的。絵本のような幻想的な画面の魅せ方が、この作品の儚さと虚しさによく似合っている。

 戦争の悲惨さは言うまでもない。この作品は虚しさとバカバカしさに着目している。死ねば英雄、生きて帰れば厄介者。今まさに苦しんでいる傷痍軍人を社会のお荷物と扱うのに対し、英霊には莫大な金をかけて記念碑を建てるのだという。その"英霊"の遺体は小さな棺に折り畳まれ、墓地建設詐欺の荒稼ぎに利用される。
 この圧倒的な矛盾へ、芸術家が稀代の虚構で喧嘩をふっかける。虚構vs虚構、このどこまでも無意味な戦いは、結局はなんのためにあるのだろう? 前述の画面の美しさが、この虚しさに拍車をかけている。
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