まみた

書くが、ままのまみたのレビュー・感想・評価

書くが、まま(2018年製作の映画)
3.4


自分の頭と口先は全く別の人間なんじゃないかと思うことがある。

思っていることと全く違う事を口走り、
事が終わってしまった後に
『なんであんな事言ってしまったんだろう』と第三者のような立場で後から心が付いてきて
自分が思ってる事は、本当はどっちなんだ?と混乱に陥ってしまうのだ。

自分で自分の感情をコントロールする事ができず
今までどれだけの人を傷つけてきてしまっただろうと思う。

怒りで泣きたくなったり、傷ついたとき
溢れそうになる言葉にならない感情が、
うまく発散できず 押し潰されて苦しいときは
気のすむまで歩き続ける。
もやもやが心の中で少しずつ整理されて言葉の泡が膨らんでくる。
泡が消えないうちに全てを掬いとるように思うままに
紙に書きとめる。

それはその瞬間でしか湧いてこないもので
後から思い出そうとすると、それとは全く違うものになってしまう。ナマモノだ。

溢れてきた思いを書くことで、目で見て再度自分の中に落とし込んで咀嚼する。
自分で自分を理解する。

ひなのが、自分の思いを言葉にすることができず、
思うままにノートに書きなぐることで、自分自身と向き合い感情をコントロールする姿は、ものすごく共感できるところがある。

彼女が肌身離さず抱えているノートは、誰に見せることもない。見られたくない自分の内側をさらけ出す。
自分がいちばん自分らしく素直でいられる場所だ。

人と関わる事を避け、壁を作ってきた彼女が、ある音楽に出会って いままでノートにしかぶつけてこなかった感情を生身の人間にぶつけるシーンがストーリーの転機で
その部分は、空気を一瞬で変え、どこかドキュメンタリー的で、生々しく 言葉一つ一つを選択しながら 自分の境遇や願望を語る様子は心に迫るものがあった。

他人が関わることは、書くことでぶつける自分だけの解消ではどうにもならない。
相手に言葉を発することで思いを伝えないと、自分が生きていく世界を変えていくことはできない。

今回、同監督の『決別』という作品と2本立てでの観賞でした。
『決別』のストーリーがあまりにも重く、切り替えができず、引きづられたままの観賞だったのですが
2つの作品から共通して言えることは 『何かに縋りついてでもいいから 現状を変えたいなら自分で行動するしかない』ということなのかなあと自分なりに解釈して受け止めました。
まみた

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