psychedelia

プリズンのpsychedeliaのネタバレレビュー・内容・結末

プリズン(1987年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

レニー・ハーリンの初期作品。典型的なB級ホラーだがしっかりした演出力で楽しめる。

しかし不満点もないことはない。

先ずストーリーを説明しよう。

舞台は20年振りに運営が再開された刑務所。そこで初日から原因不明の囚人の死傷事故が起こる。所長は囚人同士の抗争によるものと睨み, 彼らの扱いを徐々に過酷なものにしていく。だが実は事故を起こした下手人の正体は....

この内容からも分かるように,「一人の不良分子のために全員が罰を受ける」式の, 囚人映画にありがちな展開がクライマックスに用意されているわけだが, その割に囚人同士が疑心暗鬼に陥るというドラマが全く無い。そのため, せっかく受刑者一人一人の性格描写が丁寧になされているにもかかわらず, 彼らの人間ドラマに立体感が感じられない。だから悪霊が大暴れする後半に於いても, 彼らはただのガヤに過ぎず, 主要人物の4人に焦点が絞られてしまい, 彼らの出番はなくなってしまう。彼らが悪霊の存在に気が付いているのかどうかさえはっきりしないままだ。これは惜しい。囚人同士のドラマを葛藤を以て群像劇として描いていれば, もっと彼らを活躍させられたはずだ。そうすればクライマックスも一層高揚感のあるものになったはずである。例えば『要塞警察』や『ゴースト・オブ・マーズ』のように囚人と看守たちが協力して悪霊に立ち向かうような。考えてみればレニー・ハーリンの映画の欠点は一にかかってこの人間ドラマの不備に尽きる気がする。彼がカーペンターやリチャード・ドナーのように長続きしなかったのも同じ理由によるのではないだろうか。
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