いののん

マックイーン:モードの反逆児のいののんのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

手術して退院して自宅療養中(レビュー下書き時点で)(それももう終わって職場復帰してるから大丈夫です!)。入退院するときまってそうなるのだけれど、普段なら敬遠してしまうようなバイオレンス映画も、なかなか手を出せずにいた映画も なぜか観られるようになる。自分の身体のなかに手を突っ込んで滅茶苦茶にかき回したってかまわないような、そんな気持ちにもなる。体を大事にしたい気持ちと、破壊したって構わないという気持ちと、そういうの二律背反っていうんでしたっけ、そんなアンバランスな気持ちを心のなかに抱えることになる。たいした手術でもたいした病気でもないクセによく言うよ状態なので大変に申し訳ないことを承知のうえで大袈裟に語ってしまうけど、いつも鈍いわたしでも、それでもいつもよりも生と死がわたしの近くにあるんだと思う。


と、そんなことはさておき。


この映画のこと。まず劇判。この内容だったら、時にはパンク、サイケ、ヘビメタなど、ロックな音楽を挿入してもよさそうなところを、劇判はずっと悲しくて泣きそうな音楽で。それでわたしは最初からずっと泣きたくなる。天賦の才には いつも孤独や悲しみが、まるで鏡に向き合った姿のように ひとつになっている。モードとは生き方であり、革命であり、宣言であり、挑戦であり、ナメんなよという姿勢であるということが、とてもよく伝わってくる。全部のショーを全部通しでみてみたい。本当にすてき。全部が格好良かった、ってこんな陳腐な言葉しか出てこなくてごめんなさい。こんな文とは全く次元が違うところに、孤高の姿で存在する。子が親に対してできることは、親より長生きすることだと、たしかどこかでそんなことを聞いたことがあるような気がするけれど、このドキュメンタリーを観ていたら、このような子をもったら、親がすべきことは 子より1日でも長く生きることなのかもしれない、なんて思ったりして。これから毎晩、あたまのなかで、ショーをできる限り再現して(自分が深海にいて魚のドレス着てたり、ロボット2台の間でクルクル踊ったり、挑戦的なポーズでランウェイしたりするところも、モチロン妄想する)、そうして眠りにつきたい。
いののん

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