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アラジンのkomoのレビュー・感想・評価

アラジン(2019年製作の映画)
4.4
世は既にライオンキングだというのに、6月に観たこの作品を今更レビュー…(笑)
字幕、吹替両方を観てから書こうと思っていたのですが時間がなくて字幕版しか観れずじまいでした(;_;)
山ちゃんのリアルジーニー聴きたかったなぁ…。
オリジナル音声ももちろん素晴らしいものでしたので大満足ですが♪

まずこのアラジン、監督がガイ・リッチーであることに驚きました。
戦う男たちの物語をリアリティーと共に描いてきた同監督。
アラジンの物語にも戦いの要素は大いに含まれていますが、そこには沢山の魔法や奇跡が散りばめられています。こういったお伽噺的ストーリーをこれほど神秘的に、情感たっぷりに描いてくれる監督だったとは…!
冒頭の海上のシーンや、アグラバーの世界観を印象付ける『♪アラビアン・ナイト』からしてすでに、リッチー監督の浪漫観溢れるカメラワークに惹きつけられました。

俳優陣も見事なまでにエキゾチックで、アニメ版のイメージを壊さずにいながらも、しかし人としての感情がより密集して存在しているのが心地よかったです。
アラジンはアニメ版でも人間臭さの溢れるリアルなキャラクターでしたが、彫りの深い三次元の男性が演じると更に格別な存在感がありました。
アブーがジャスミンの腕輪を盗んでしまったあと、自身の行動をも悔やむアラジンと、アラジンに怒りをぶつけるジャスミンのやり取りは、ロマンス映画さながらのナイーブさ。
大人でも胸に来るような美しい恋愛描写が多く、アニメ版にあまり惹かれなかった人でも新たな魅力を発見できるのではと思います(*^_^*)

自分は元々『♪ア・ホール・ニュー・ワールド』を聴いただけで泣くタイプ…(笑)
かの魔法の絨毯のシーンは、映像のクオリティーや役者の歌唱力はもちろん、そのシーンに至るまでにアラジンとジャスミンのほろ苦いやり取りがあったおかげで、より感慨深く魅せられることとなりました。
それと、実写版オリジナルであるジャスミンの侍女の存在感!
ジャスミンが彼女に語りかけるシーンが多かったおかげで、ジャスミンの心情がより読み取りやすくなり、魔法の絨毯のシーンの素晴らしさも上手く言語化されていたように思います。(もちろん言葉では言い尽くせない映像美やファンタジー要素もディズニーの魅力ですが^^)
この侍女の存在は映画の最初にも最後にも掛かってくるため、効果的なオリキャラ投入に驚かされました。

そしてアラジンを語るに欠かせない、ランプの魔神ジーニー。
CMの段階では青すぎるウィル・スミスに不安しかありませんでしたが(笑)、不思議と作品のコントラストにマッチしていました。
外見的にはアニメ版よりもゴツさとおどろおどろしさが増していますが、ひとたび口を開けば完璧にあの明るいジーニーです!
ジーニーが歌うシーンには『ショー』という言葉がぴったりだと思います。長年ランプの中に閉じ込められていたジーニーですが、彼の姿はより多くの人に見られるべきものであり、存在そのものが究極のエンターテイメントでした♪
ウィル・スミスの力強い口上は、本家吹替のロビン・ウィリアムズにも負けないくらい。ロビンの『♪フレンド・ライク・ミー』をもう聴けないのは寂しいですが、あのコメディアン精神はしっかりと受け継がれています。

そしてアニメ版でも実写版でも、ジーニーの日本版の吹替は山寺宏一さん。このおかげで実写版のシュールなジーニーにも、『お馴染み感』を覚えます。
(私は吹替版はCMでしか観ていませんが)山寺さんの凄いところは、"キャラクター"と"キャラクターを演じる役者"、両方の代弁者であるところ。
ウィル・スミスとジーニーの両方を意識するのってかなりハードな技だと思うのですが、山寺さんは見事にそれをこなしていらっしゃいました。
もちろん本家役者の魅力を知るにはオリジナル音声が一番良いとは思うのですが、吹替も巧みな表現者によるものであれば、作品への理解を深める鍵となります。なので私は字幕と同じくらい吹替版も大好きです♪
中村倫也さん、木下晴香さんの吹替に関しては、劇中のセリフは聴けていないのですが、柔らかく広がりのある歌声はまさに、砂漠の上空を優雅に飛び回るアラジンの世界観そのものでした。

また、主役と同じくらい重要な役割を担うジャファーという人物。
アニメ版ではコミカルな初老男性だったジャファーですが、本作では年齢設定がかなり若く、常に何かに急き立てられているセンシティブなキャラクターとなっていました。
加えて、お調子者であるはずのジャファーの相棒、イアーゴもカタコトしか喋らないので、不気味さが格段にアップ。
本作は人間の心の影の落ち方が非常に重く描写されていますので、このようなジャファーの重厚さ、闇の深さの表現も実に良かったです。
ストーリーの大筋は分かっているのに、ジャファーが力を持ち始めてからのシーンには全てハラハラ。久々に手汗かきました…(笑)

終盤、国王が絶望の境地に立たされる中で
ジャスミンが歌う『♪スピーチレス』。実写版オリジナル曲です。この歌自体がストーリーを動かすことはないものの、ジャスミンの張り裂けそうな胸の内をここまで表現しきれる歌があるとは…!という思いです。ナオミ・スコットさんの歌声がすごい、すごすぎる。情念たっぷりに歌い上げているものの、その姿は凛としていて美しい…。
アラジンに限らず、ディズニー映画には自身の生まれに苦悩するキャラクターが多い中で、このスピーチレスは多くのディズニーキャラの心の叫びのようにも感じられました。
この曲はよく有線でも流れていましたが、出先で聴くと泣いてしまうのでやめてほしいです…(笑)

最後の最後ではやはりアラジンとジーニーの友情が泣けますし、『ストーリーを知っている人でも泣ける演出』ができるディズニーの底力には本当に凄まじいものがあります。

アニメーションの実写化は必ずしも成功するものではありませんが、やはりディズニーさんは表現力において観客を裏切らずにいてくれます。
ファンタジーを、『この世に存在するもののように見せること』。
そんな難しい命題に挑戦し、よりリアルな夢を届けてくれる方々に感謝です。
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