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七つの会議のNMのレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
3.2
錚々たる役者陣で面白い。テンポが良くて一気に観られる。途中で飽きないから誰かと一緒に観るのにも向いている。
硬派なビジネスものというよりは、構図が明確でとても見やすい作品。
会社勤めで苦しい思いをしている人、したことがある人は彼らの思いを共感できる。もちろん経験がなくても理解できるシンプルなストーリー。
秘密を抱えこむ会社と、翻弄される社員、譲れない社員、それぞれの物語。
サムライ精神などというものは本当はそれほど美しいものだろうかという疑義を呈する。
激しいパワハラシーンはあるので体験がある人等は一応注意。

つい一度隠した、嘘をついた、見て見ぬふりをした、という人々がその後も嘘を重ねるしかなくなり、かくしてブラック企業の立派な一員となっていく。部下たちにも同じような指導をし、結果企業が存続し続ける。それから抜け出すのは簡単ではない。

野村萬斎がただならぬ雰囲気を持つ人物をわかりやすい演技で表現してくれている。というか立ち姿が立派過ぎる。歩くときも上半身がぶれない。
八角は始めこそ異彩を放っていたがやがて正直過ぎて馬鹿を見るというか結局人を信じ過ぎる甘いところが見えてきて、その人物像の変化も印象的。

北川部長にもやむを得ない事情がある、というような描かれ方をしているが、部下たちを激しく追い込んだ罪は消えるとは個人的には思えない。全員には謝れないし、反省すればその過去がなくなるわけではない。全員が許してはくれないだろうし、失われた給料や成績を補償できるわけではないし、精神を病んだり自死に追い込まれた人がいるならできることはほぼない。香川が憎めない演技をするのでついほだされてしまうが。
ついでに言うと不倫被害で辞める女子社員も、今は吹っ切れて頑張っていますと言われても、それで良いのかという気持ち。
それは現実的ではある。
往々にして悪は罰せられないし、殆どは復讐したり精算を求めたりはしないで割り切って生きる。

考えてみると不倫相手が左遷で済んでいる時点で、会社の体質を察することができたかもしれない。一旦隔離してあげただけでありほとぼりが冷めたら本社に戻ってきかねなかった。

役所広司の演技も良かった。あの短い時間で、良い人ではあるが理想しか知らず、彼も社会を変えられないであろうことを想像させる。
八角も彼に語るとき正論しか言わず諦めているように見えた。ここまで聞いといてその質問か、という感じ。

最初に出てくる及川光博は主役かと思っていたら、語り手の一人であった。
原島はえぐい詰められ方をしてその場で吐くほどの思いをしているが、その後は案外けろっとしているので、実は隠れメンタル強者だったのかなとも思う。
良い人なので悪どい営業はしてこなかったと思うが、それでも二課の課長までは来ていたので、結局一番の営業マンは彼だったのかも。

サスペンスとして紹介されていたのでそれを期待してしまうと少し肩透かしがありそうに思う。


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壮絶なブラック体質の会社・東京建電。ゼノックスグループの一員であり、そこからのプレッシャーもある。

鬼の北川部長から毎月無謀なノルマを押し付けられ、営業一課の課長・原島は胃の痛む日々。

それに比べて毎月不自然なほど成績優秀な営業一課。課長の坂戸は部長の愛弟子。
その一課は奇妙な社員を抱えていた。会議で寝る、定時で帰る。プレッシャーの厳しいこの会社で目立ちすぎる態度。常にノルマに追われる他の社員たちからも疎まれている。
坂戸がその社員・ヤスミ(ハッカクとあだ名されているらしい)を叱り倒すと、傷ついたのでパワハラで訴えると言う。
それを見ていた一課は皆その八角を笑ったが、坂戸はあっけなく左遷になった。
今まで部長にあんなにかわいがられていたのに妙。

不在の席を埋めるべく一課の課長に異動した原島が調べてみると、八角は20年前まではトップ成績だったことがわかった。
どうして今はぐうたら社員になり、且つ何の処分も受けていないのだろうか。

営業部と犬猿の仲である経理部。
営業部の足を引っ張るべく八角に目をつけた。
役員会議で八角の不審な転注を見つけ議題に出したが、なぜか社長含め誰も聞く耳を持たず恥をかく格好になった。

八角の秘密を探ろうとした人物が次々と返り討ちにあっていく。

一課の浜本。他の社員と同じく八角に疑念を抱いている。近日中に退社予定がありもう怖いものはない。
彼女に巻き込まれた原島は二人で本格的に調査する流れに。

八角は、そして会社は、何を隠しているのだろうか。
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