ヨッシー

七つの会議のヨッシーのレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
3.0
『テレビ局は映画作るのやめたん?』

池井戸潤の同名小説を実写映画化。

中堅電機メーカーの営業部課長が部下のぐうたら課長へのパワハラによる更迭をキッカケに会社に隠された恐るべき秘密が明らかになっていく。

監督は『祈りの幕が下りる時』などの福澤克雄。
主演は野村萬斎。

最近テレビ局主導の映画のテレビドラマ化が非常に目立つ。
去年公開の『劇場版 コード・ブルー』は2018年の興行収入2位の大ヒット作ではあるが、映画的な要素がほぼなしの文字通りのテレビドラマを劇場で流しただけの作品。
今年でも1月の時点でフジテレビ制作の『マスカレード・ホテル』、日テレの『十二人の死にたい子どもたち』とテレビドラマ的な演出が目立つ作品が次々に作られている。ただ、この3作についてはそれ以前に内容が酷すぎるけど。

今回の『七つの会議』は前述した3作と比べればまだ普通に面白い作品ではある。
本作のテーマは現代の日本企業が抱える闇を的確に捉えている。会社としての利益を追求することを第一にするあまり不正や社員の過度な労働などの現在の労働というものの現状をしっかりと描いているし、逆に単にこういったものを完全な悪として切り捨てず、責任者側の苦悩も(多少ではあるけど)描いている。

また、全編が会話劇という地味な絵面になりそうなところも豪華役者陣の非常にこわばった表情の演技(要するに顔芸)で持たせている。この役者陣の顔相撲を見てるだけでもそこそこ面白い。

企業ものという小難しいジャンルの作品ではあるが、なんでも親切に説明してくれるので、特に知識がなくても楽しめる。エンタメ性は高く誰でも楽しめる作品ではある。

ただ、やはりこれを映画と呼んでいいかは疑問である。
映画というのは映像芸術であり、映像的に物語を語るものである。もちろんある程度は台詞による説明というのは必要ではあるが、ほぼ全編台詞での説明だけで済ませるのはテレビドラマのやり方で映画的ではないし、絵作りもテレビドラマっぽい。

なんでも台詞で言ってしまうと言うと、特問題なのがエンドロール。
主人公の八角が作品のテーマ的な演説をずっとするんだけど、それは流石に言っちゃダメだろ。
本編を見て観客が考えていくテーマの結論的なものを作品側から語ったらもう何もなくなっちゃうよ。この辺も『コード・ブルー』のエンドロールに似てる。

作品の内容に関しても詰め込みすぎで消化不足のところがいくつかある。
特に八角の家族の問題や彼が20年もぐうたら社員だった理由辺りはかなり消化不足。

前述した通り決してつまらない作品ではないのだが、映画というよりはちょっと豪華なテレビドラマを劇場で流しただけという印象がやはり強い。
『コード・ブルー』のようにそもそもつまらなく内容が薄っぺらいよりはだいぶマシだが、やはり1800円払って映画館で見る価値があるかは疑問。

こうしてテレビドラマ的な作品が増えてきたあたり、『劇場版コード・ブルー』の大ヒットによる悪影響が出てきている気がする。
今後の邦画がより不安になってきた1本だった。
ヨッシー

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