ベビーパウダー山崎

初夜の海のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

初夜の海(1984年製作の映画)
3.5
ポルノとして受け取ってしまえば、金持ちのおっさんが若い女性を誑かしてハーレム状態でウハウハしているだけの中年のくだらない妄想で終わってしまうが、中原俊という作家を通して見ていくと、各々の心情に寄り添うように動くキャメラとその胸の内で奏でているような優しき音楽が絶妙で、のちに『櫻の園』で的確に映し出した若き女性の掴めそうで掴むことができない、あの思春期の浮遊感も学校をサボりまくっている妹のくだりで見ることができたりして、おそらく中原俊はドラマがどこに到達するのかより人間に興味がある、そしてその普通の人たちが起こしてしまう予想外の展開(理不尽な行動)こそが「映画」であることも理解している、すなわち中原俊の「映画」は尊くてエモい。