ピアソラがそこにいて、語っている。
ただただそれだけでよい。
ドキュメンタリーとして構成がどうとか
ぐちゃぐちゃした蘊蓄は彼方にぶん投げて、
いかれた変人の生きた証だけを味わい尽くす。
ピアソラが作る音のザワつきの正体を、この映像で理解した。ザワつきは心を鷲掴む。
切ないでも物悲しいでも愛しいでもなく、
芸術はある域を越えると、ジャンル、カテゴリ、境界線がなくなり、ただ、その場から身動きできないほどに魂を揺さぶってくる。
タンゴかタンゴでないか。
そんなことでなく、ピアソラが作る音。
という、ただそれだけ。
「過去を振り返るな、昨日成したことはゴミ」
「音楽は考える人のものだ、談笑や食事しながらではなく考えながら聴いてほしい」
ピアソラの残した偉大な楽曲に出会えたこと、私の人生において何にも変えがたい素晴らしいことだ。