海

夜明けの海のレビュー・感想・評価

夜明け(2019年製作の映画)
-
言われるより前にさよならを言って、通いつづけた海沿いの小さな町にも行くことがなくなって、一年以上ぶりに、ラジオを聞く生活に戻った。最近聞いてる局で流れる音楽はどちらかといえば邦楽が多くて、あとは新型コロナの話ばかりをどのパーソナリティもしてるけど、気が滅入ることは不思議とない。レベッカのフレンズ、椎名林檎のあおぞら、ノラ・ジョーンズのdon't know why、あとどの曲だったか忘れたけどジェレミー・ザッカー、ぜんぶ好きなのに、ラジオで聞くのがはじめてだと、はじめて聞いたみたいな気持ちになる。昔聞いてたラジオで、自分の弟の名前をラジオネームにつかってるひとが居て、週に一度は読みあげられるそのひとのメールの中で、はっきりと語られたわけでも何でもないんだけど、その名前の本当の持ち主がきっともうこの世には居ないってことに、突然気づいてしまった日があったんだ。きっとわたしたちは苦しみや憎しみから解き放たれたいんじゃなくて、ただ救ったり救われたりそういったことをくりかえしていたいだけだ。きっとわたしは悲しむのをやめたいんじゃなくて、この悲しんだことたちがいつかあなたやあなたじゃない誰かや誰でもいいあなたのためになってほしいだけだ。許されたいんじゃない、自分の名前を必要とされたいだけだ。誰かに笑って語れるようになったらもう終わりなんだろうなって思っちゃうようなことがたくさんある。大したことも、大したことじゃないことも。生きていたいひとにだけ、生きていてよと願えたらいいのに。そう上手くもいかない。でも願うしかない。
海