ミシンそば

愛すれど心さびしくのミシンそばのレビュー・感想・評価

愛すれど心さびしく(1968年製作の映画)
3.6
積みDVDから久しぶりに鑑賞。
観終わった後、絶妙に心の整理が難しい、つらい映画。

主演のアラン・アーキンは、オスカー獲ったのは最近だけど脂が乗りきっていた時期はこのころよな。
かなり難しい役柄だと思うが、目の演技で魅せてくる。
自分も孤独という状況には慣れ親しんでいるが、アーキン演じるシンガーが抱える孤独は、観ててとても他人事には思えないほど痛々しい。
心の、喉から肺ごと焼き尽してしまいそうなほどひどい渇きが、全編を通してこちらに伝わってくる。

精神的に幼いがゆえに、立て続けの不幸を受け止め切れずに自棄になるソンドラ・ロック演じるミックの「ああ、この子は未来をこれから先も直視できないな」という危なっかしさや、時代ゆえの黒人やマイノリティに対する悪辣な態度なんかも不快ではあるが、やはりシンガーが抱える心の渇きの方が自分には重く映った。

ランタイムが半分を過ぎたあたりから、明確にシンガーとミックの心がすれ違い切ってしまったことが素人の自分にもはっきりわかる演出(パーティの少し前あたりから物凄く露骨)も、心にグサッとくる。
結局、シンガーにとっては誰でもよかったのかも知れないと解釈できなくもない分、一周回ってシンガーとミックは似た者同士なのかも。

二人とも救われないし、二人が求める救いを、周囲は用意できない点に関しても。