エミさん

まく子のエミさんのレビュー・感想・評価

まく子(2019年製作の映画)
3.3
原作を取り急いで端折った感はあったものの、ファンタジックで真理的な良さは活かされていて、フワッとした優しい素敵な作品でした。

やっぱり新音ちゃんの可愛さよ!! 私もトキめきました。
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そして、草なぎ君のお父さん役。飄々とした雰囲気、何だか良かったなぁぁ。外へ向けた男性としての色気もあるけど、内に向ける家族への愛情もちゃんとあって。そういう人柄をサラリと演じられるようになったんだなぁ〜って、あらためて思わされました。

徐々に大人になっていく11歳の多感なサトシが、大人と子供の狭間で苦しんだりアイデンティティを求めながら毎日を過ごしている様子や、それを興味深そうに追いかけるコズエのやり取りが眩しくて、ずっと観ていたいなぁぁって思ってたら、コズエが言う「小さな永遠を、終わらせないといけない。」っていう、あのセリフ。物語の終焉を予感させるセリフである。
少しだけジンとしてしまった。
私も小さい頃、コズエと出会いたかった…。
友達からイジメられたり、大人から「子供は黙ってろ!」と言われた時、早く大人になりたいと思ったり、放課後の静けさなんかに、フッと物悲しくて「このまま時間が止まれば良いのに…」と思ったり、春休みが来る度に「このままではいけない」という大人にならざるを得ない予感にも似た焦燥感に駆られたりしたものだった。当時は、最悪な毎日を送っていると思っていたが、今あらためて顧みると、何も知らないということは危なげで自由で、でも可能性がたくさんあったんだなぁと、幼なさが逆に懐かしく思える。映画とオーバーラップして、あの頃に帰れたような気がした。

人は生まれた瞬間から死に向かって生きていく。成長過程の時期には忘れているそんな事実も、老いていく過程の時期に差し掛かると急に思い出させられて、思わず忘れ物を探すかの様に、もがきたくなってしまう。ずっと有意義な人生がいいに決まっているが、なかなか、そうは過ごせない。もし、平坦な人生は味のない不幸なものだと思えることで、辛い現実を緩和させることが出来るなら、それだけでも救われるような気がしました。