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ソローキンの見た桜のトモのレビュー・感想・評価

ソローキンの見た桜(2018年製作の映画)
4.4
ソローキンの見た桜

日露戦争時代、日本で初めてロシア兵捕虜収容所が設けられた松山を舞台に、運命的に出逢ってしまった日本人看護師とロシア将校の二人を中心に歴史に翻弄された人々を描いた作品

日露戦争時代のロミオとジュリエット、と書かれていたので恋愛に重きがおかれた作品かなと思っていたが、それだけでなくロシア兵捕虜が収容される様子を丁寧に描いていたり、ロシアの内部崩壊を示す会話、時代背景、文化の違い、捕虜でありながら条約遵守のため様々な便宜をかけた日本の事情、祖国の家族に伝えたい繊細な思い(手紙)が暗号とされ検閲を通らないという理不尽等

史実に基づく話であるし、その時代を感じさせるような映像なんだけど描き方があまり観たことのないもので、とても新鮮な気持ちで観ていた

戦時中、国同士が分かり合う、敵国同士の男女が恋をするのなんて有り得ないのだったと思わせる表現がとても強い一方で、一人と一人の対話から歴史って少しずつ変わっていくものなんだなという事も強く感じる

主演の阿部純子さんは「とと姉ちゃん」や、「孤狼の血」の世界観で素晴らしく光っていた女優さんですが今作も素晴らしかった

表情や息遣い、発声など大げさでなく感性の豊かな女優さんだなと思った、凄い女優さんなのかもしれません

戦争がなければ一緒に眺められた桜、戦争がなければ出逢えなかった二人の物語、とあるようにとても切ない話ではあるけど、継がれていく思いも確かにあって、歴史とその時代の人々の心情を紐解く現代パートを含めとても良い作品

追記 コニャックの件結構好き
トモ

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