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ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Waveのtakのレビュー・感想・評価

3.7
前作「ライフ・オン・ザ・ロングボード」は、中高年男の再挑戦を描いた素敵な映画だった。続編となるこの「2nd Wave」は、サーフィンしか頭にない青年の物語。映画序盤からいきなり彼は見事に波を乗りこなす。「海猿」みたいに、最初からデキるヤツがなんだかんだでチヤホヤされるタイプの映画なんじゃないの?。その先入観は見事に打ち砕かれた。

陸に上がった彼はダメ男。挨拶もできなければ、種子島で暮らす為の仕事を紹介されても、まともにこなすこともできない。サーフィンの恩師の娘からは冷たくあしらわれる始末だ。そんな彼が、病院の仕事で知り合ったお年寄りたちに尋ねられ、サーフィンの魅力を語る。地球に抱かれているみたいだ、生きているって実感する、と彼は言う。お年寄りとの関わりを通じて、彼が人間関係の大切さに気づき、行動が変わっていく。

前作同様、僕は素直に感動した。ベタな話だと言う人もいるかもしれない。でもダメ男が変わっていく成長物語は、古今東西そんなに本質が変わるもんじゃない。ベタだと感じるのは、死んだ父の思い、お年寄りや家族の再会のエピソードが絡むのを、きっとこそばゆく感じてしまうから。人が変われるのは誰かがいるから。それを素直に受け止めて観て欲しい映画だ。

傍目から見たサーフィンのカッコよさを写した映画はいくらでもある。でもサーファーが肌で感じている面白さ、楽しさ、夢中になる気持ち、うまく波に乗れて技が決まった瞬間のエクスタシーを真正面から捉えた成功作って実はあまりないと思うのだ。「ビッグ・ウェンズデー」以外の最近の作品なら、キャサリン・ビグロー監督の「ハート・ブルー」がサーフィンとスカイダイビングの魅力にちゃんと触れている稀な映画かな。特に邦画ではなかなかない。だけど本作はまさにその一つ。

種子島の美しいビーチの風景が気持ちを盛り上げてくれるだけじゃない。水面スレスレから波を撮ったサーファー目線の映像。さらに上空からの目線で、乗りこなす波の高さを、そして広がる海原と次々に迫ってくる波を捉える。その視点があってこそ、地球に抱かれる感覚という言葉が活きているように思えた。そして前作以上に、種子島の暮らしが描かれているのも素敵なこと。

夢中になれることがある素晴らしさと、人生の波を感じること、それに乗り遅れないこと。タイトルの意味がじんわりと心にしみる映画だった。
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