松井の天井直撃ホームラン

魂のゆくえの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
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↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。

☆☆☆☆

40年後のトラヴィス

「神の御心はわからない」

イーサン・ホーク演じる牧師は、環境活動家のマイケルに対して答える。
そして更に、息子を戦場で失った心情を吐露し、(過去には自分も戦場へ行った経験が有る)一旦はマイケルも納得する。

「2050年はどうなりますか?」

マイケルに問われた彼は、心の中で動揺する。
何故なら。彼には、もう自分の死期が近づいているのを自覚しているから。
その為か?尊敬する聖職者の様に、(自分の生きて来た証を残したいのか?)日記を書き始めている。
これは、彼にとっての《遺書》でも在るのだった。

だが…。

マイケルは、子供の運命を神の使いで在る彼に託す。それが神から自分に課せられた命題となった。
その結果、次第次第に現代社会の在り方に疑問を感じて来る。

監督・脚本家であるポール・シュレイダーは、元々著名な映画評論家でも有り。「聖なる映画 小津/ブレッソン/ドライヤー」(未読)で知られている。
テーマや画面構成等から、人間の持ち併せている【聖なるモノ】を論じた著書の様だ。

そんな、真面目に映画を論じる反面で。日本のヤクザ映画を始めとするプログラムピクチャーにも精通していて。脚本デビュー作の『ザ・ヤクザ』や、監督として『MISHIMA』等。゛義 〟を貫こうとする男の話を監督している。
初期の脚本作品としての代表作と言える『タクシードライバー』は、まさにそんなポール・シュレイダーの本質が活かされた作品だったのだろう。

シュレイダーの過去の監督作品の中で、『白い刻印 アフリクション』とゆう作品が在る。この作品の主人公は。憎んでいた父親に、自分自身が段々と似て行くのを自覚しているのを思い悩む。町の実力者が…の点といい、アル中で在る点といい。この『魂のゆくえ』の主人公は、『白い刻印…』の方が『タクシードライバー』よりも近い人物像なのかも知れない。

【死に取り憑かれる男】とゆうテーマも、ポール・シュレイダーが脚本した作品の中で、しばしば登場するテーマの1つ。
脚本家としての代表作と言える『タクシードライバー』同様に、ベトナム戦争のトラウマに〝取り憑かれている〟とゆう辺りは、『ローリングサンダー』も同じ。
再びスコセッシとタッグを組んだ脚本作品の『救命士』も、死と隣り合わせの状況に苦悩する話だった。
『魂のゆくえ』の主人公は聖職者=神に近い人物…では在るが、脚本作品の『モスキート・コースト』は。未開の土地で在るアマゾンで、理想郷を築こうとする男の狂気で、或る意味(強引に言えば)神に近づこうとする話。

それらの過去の諸作品を感じながらの鑑賞だっただけに。「きっと最後は、狂気性が爆発して!」…そう思いながらいただけに、最後の最後に訪れた結末には、正直驚いた∑(゚Д゚)
自分の頭の中でどう消化してよいのか?ちょっと思い悩んでしまったのは事実。

まるで…。

神からの御心が届かないのなら、自分から神に近づいて行き答えを得たい…かの様な(強引に解釈して)

2019年4月22日 シネマート新宿/スクリーン1