カラン

魂のゆくえのカランのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
3.5
ブレッソンの『田舎司祭の日記』の影響を受けているという話をどこかで読んで、観てみた。

実に奇妙な映画で、病んだ司祭が過激な環境活動家に目覚めるという物語。いやもちろん目覚めるのはいいんだけどさ。その、寄生的な引用は自分の名声をおとしめるだけなのではないかと。










☆前半 : 『田舎司祭の日記』を頻繁に引用してくる。ブレッソンとはほとんど無関係な文脈でうわべだけのコピーとしての引用なので、何の意味があってやっているのかと考えさせられ、映画から気持ちが離れていく。結局は寄生しているだけなのが、悲しい。自分でストーリーを起こせなくなってしまったのかも。

日記、祈り、自転車、酒に漬けたパン、等々の引用をばらまく。おまけに説明臭い解釈で引用を回収しようとしてくる。「祈りについて語る者は祈りを分かっていない」とか、「日記は自己憐憫だ」とか。これ、ブレッソンに断罪されるタイプの語りだよね。だからオマージュにすらなってない。アマンダ・セイフライドに祈れないから、一緒に祈って欲しい、と言われて、祈ってやり、祈ってやったと日記で語る。これが『最後の誘惑』(1988)の脚本家の作る映画なのかと、呆気にとられた。


☆中継 : アマンダ・セイフライドと重なり合うマジカルミステリーツアーごっこで、古典的なサイケデリック超越をする。やっとまともな映画になるのかと感じたが、、、


☆後半 : 過激派に転向して、『太陽を盗んだ男』の沢田研二の爆弾テロと、ウィレム・デフォーじゃなくてメル・ギブソンのSMいばら冠がショートしてしまったのか、爆破テロを諦めて有刺鉄線を身体に巻き付け、パイプフィニッシュを飲んで自殺しようとする。アマンダ、その人は身体に有刺鉄線を巻いてるから、抱きついたら、痛いよ?


ポール・シュレイダー、もしかしたら具合が悪いのかな。パイプフィニッシュとか洗濯用洗剤とかを飲んだらどうなるのかな?って考えちゃうのかもね、心配。



レンタルDVDは5.1ch。凄い音圧の低音が後半にかけて3、4回入ってる。低音の音圧で空気が揺らぐ。








アマンダとのマジカルミステリーツアーは『田舎司祭の日記』の按手やバイクの2ケツにおける、日記の孤独と対立する接触系の引用である。この引用は『魂のゆくえ』の監督が『田舎司祭の日記』をきちんと観ていることの証拠である。しかしこの映画がそれで正当化されるかは疑問であるが。
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