砂場

魂のゆくえの砂場のネタバレレビュー・内容・結末

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ポール・シュレーダーが数十年の時を超えて『タクシー・ドライバー』のトラヴィス級の狂人を生み出したのか、、

イーサン・ホーク演じる郊外の小さな教会の牧師トラー。彼はイラク戦争で息子を失うという過去を背負っている。教会を訪れた若い女性の相談にのるが彼女の夫は過激な環境活動家であり地球の未来を悲観して自殺する。トラーは息子に続きまたしても彼を救うことができなかったのか、、、
また彼の教会が環境汚染を引き起こす大企業から多額の寄付を得ている事実が判明し、彼の教会への信頼が揺らぐ。

そんなこんなでトラーは精神に変調をきたすようになる様は悪霊に取り憑かれたようで目がぶっ飛んでいるしやばい場面だ。

トラヴィスが1976年に登場した時ベトナム戦争の厭世気分もありおそらく若者を中心に強い共感を得たのではないかと想像する。では2017年のトラーはどうだろうか、、、
キリスト教として環境破壊に強い危機感を感じラストでは教会に集まった信者ごと自爆しようとする。
少なくとも自分は共感できなかったし、まあ別に共感できない名作なんていくらでもあるのでそれ自体はいいとしてもポール・シュレーダーが込めたメッセージを感じ取ることは厳しかった。
なんでかな?と考えるとまず時代が大きく変化したのだ。啓蒙思想家ジョセフ・ヒースの『反逆の神話』で論じられている通り反逆行為そのものが神話であったと、バレちゃっている現代においては、、、

ポール・シュレーダーは本作を構想50年だそうだが、さすがに長すぎたのではないか?空中浮遊のヴィジョン含め決定的に古い。
宗教が救いにならないことはわかるとしても、反逆のテロ行為がそれへの対抗原理というような簡単な解決策を拒む時代が今なのだ。
どうしていいかわからない混乱をポール・シュレーダーは感じさせることは本作を怪作としている。
トラーがトラヴィスのように長年カルトヒーローになるのかどうかは今はわからない
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