砂

魂のゆくえの砂のレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
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タクシードライバーの脚本家、ポールシュレイダーの作品という前提を踏まえた上で本作を考えるべきなのか。多分そうなのだろう。
単純な二項対立で断罪できないほど複雑極まる構造となっている今の社会は作中で扱われる環境問題も然り結び目は様々な糸であり、宗教やスピリチュアルすら内部に吸収され救いにならないという様相を示している。そんな中で過去の経験や現状の矛盾に葛藤し牧師が必要な牧師となっている主人公は、宗教に限らない象徴として出口のない自答で徐々に思い詰めていく。自身の思考と記述が一全となる修正がきかない手書きの日記という内省も、暗い道をひた走るように孤独を深めていく。ラストシーンは現実なのか、あるいは妄想なのかはわからない。

最近観た映画に共通した傾向として、あまりに強固に固定されてしまったシステムに内在する矛盾や不和に対する葛藤あるいは、どうやってもその中に回収されてしまいオルタナティブが存在しないことの苦難が象徴的に描かれている作品が多いようにおもえる。極めて静かで抑制的な本作もそのような作品であった。
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