てっぺい

孤狼の血 LEVEL2のてっぺいのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.0
【2倍楽しめる映画】
ラスト30分の転換から一気に怒涛のラストへ。前作と似て非なる脚本の妙に加え、主役を凌ぐ鈴木亮平の演技力と存在感。賞総なめの前作を巧みに繋いで拡げた世界観で、前作を想起しながら、頭を2倍回転して楽しめる映画。
◆トリビア
〇原作者の柚月裕子がクラブのママ役でカメオ出演している。(https://ddnavi.com/interview/828922/a/)
○ 本作とさまざまなジャンルがコラボするプロジェクト「コロウノチVS」の一環として、コミカライズが『マンガクロス』(秋田書店)にて、2021年8月16日より連載開始。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/孤狼の血_LEVEL2)
○ 前作の劇中で、大上の形見として残された狼の絵が彫られたジッポは、実際に役所広司から松坂桃李へと受け継がれ、松坂が使用していた。(https://news.yahoo.co.jp/articles/9bba450831142868f553ea2a320089adc6bf5d1c)
◆概要
前作「孤狼の血」の続編で、3年後の呉原を舞台にした完全オリジナルストーリー。
監督:白石和彌
出演:松坂桃李、鈴木亮平、吉田鋼太郎、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、滝藤賢一、中村獅童、斎藤工
◆ストーリー
3年前に殉職した大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。その日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩。悪魔のような上林によって、呉原の危うい秩序が崩れていく。

◆以下ネタバレレビュー

◆脚本
暴力団の抗争と警察の闇に翻弄される大上と日岡を巧みに描いた完璧な前作の原作・脚本力。それをオリジナル脚本でいかに拡げるのかも注目だったけど、なるほど同じ穴のムジナで、またもや日岡が県警から出し抜かれるとは。前半スパイ作戦のヒヤヒヤが一気に戦争へと変わる、ラスト30分の場面転換、もぬけの殻となった瀬島の自宅シーンが素晴らしい。“戦争だ”と日岡が高坂に持ちかけ始まる映画の花火というか、大詰め感の興奮度が絶頂だった。
◆鈴木亮平
肉親すら猟奇殺人する、劇中の言葉で言えばまさに“死神”の上林。目をくり抜く猟奇殺人を繰り返し、親父五十子の奥さんすら躊躇なく撃つ、脚本上ですでに徹底した狂気ぶり。もみあげを剃ったあのスタイルは鈴木亮平の案だそうで(https://www.cinematoday.jp/news/N0125477)、まさに死神そのものの上林というキャラクターが内と外から作り上げられていたと思う。全てを見抜き、チンタに指を詰めさせなお追い詰めるあの姿にはゾクゾク感があった。しかしアイスピックを脳に突き刺すシーンは見る方が痛かった…。
◆前作
短髪で髭を生やし無骨なビジュアルの日岡に、前作の大上を重ねて見てしまう。劇中何度も映し出される、大上から受け継いだあの狼のジッポ。そして組の若手の火を遮り、自らジッポでタバコに火をつける日岡の姿は、亡き大上への日岡の敬意の演出だったと思う。“大上は罪な男だ”の瀬島のセリフも含めて本作は、前作を思い起こしながら見てしまう、まるで2倍頭が回転して見ているような感覚だった。
◆ラスト
山で狼を追うラスト。“日本の狼はとっくの昔に絶滅してる”と劇中でもあったように、あの狼は日岡の幻想のはず。前述の通り、大上の意思とその影を追い続けた日岡。一匹狼は、前作では大上であり、本作ではその影を追いつづけた日岡そのもの。あれは、孤狼として奮闘するも多くを失い、街を守れなかった日岡が自問自答する先に見えた、大上という正義だったのでは。そんなラストに思えた。
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