虎舞羅ーコブラー

孤狼の血 LEVEL2の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
5.0
「警察とヤクザの狭間で均衡を保つ一匹狼の刑事。しかしその均衡は、一匹の狂犬によって崩された。警察・ヤクザ・マスコミ、全て敵。血湧き肉躍る、一匹狼のバイオレンス・エンタテインメント。」

柚月裕子さんの「孤狼の血」「凶犬の眼」「暴虎の牙」を読破するほど、個人的には小説の中でも大好きなこのシリーズ。そんな中、映画版前作からのオリジナルストーリーという事で期待値MAXで鑑賞。やっぱり流石は白石和彌監督、その期待値を大きく上回って魅せてくれました。

今作の大きな見どころは、やはり圧倒的な悪、上林の存在でしょう。出所直後から残忍非道な殺人行為を繰り広げ、平成に入り安定期と化した広島の均衡を壊してゆきます。
“上林が出てくるたびに恐怖を感じる…?そんなに怖いんかい?上林っちゅー奴は。まさかね…”
なんて思っていた私を後悔させる位の凶悪度でした。ごめんなさい。あぁ…、こんなナメたこと言ってたら、私の惨めなお目目をグッジョブ👍で**されちゃうよ〜(;´Д`)
正直なところ、これからTVに出てくる鈴木亮平さん怖く感じちゃうかも。いや、勿論演技とは分かっちゃいるんですが、あんな死神みたいな笑顔からの威圧感がハンパない真顔、そして容赦ない拷問なんか見てたら怖くなりますよ…。本当に、誇張評価じゃないです。マジです。苦手な方は多分拒絶反応激しめに起こします、コレ。
そしてここ最近の邦画では、特に突出した残虐描写がここで存分に発揮されています。上林が成し遂げる暴虐の数々、ここで安易に口に出来るレベルじゃありません。強いて言えば、上林は男女の域を越えて動物までも躊躇無く殺します。前作のコンプラに影響されない力強く迫力がある映像を受け継ぎ、それをさらにレベルアップ。苦手な方には絶対勧めません。

また、前作から全てがレベルアップしているのですが、その中でも特に好きなのはアクションとストーリーのボリュームアップ。
今作のアクションは、いわゆる"映画としての華麗な戦闘"ではなく、生死の狭間で藻掻き展開される生々しいアクションでしたね。決して主人公の無敵さを感じさせず、本当の命の奪い合いかの様な緊迫感には胸を打たれます。またサウンドエフェクトも見事で、実際の銃声と同じ乾いた発砲音が轟くシーンが多く、劇場だからこそ味わえる楽しみがありましたね。特に驚いたのはある方が撃たれるシーン。至近距離という事もありますが、弾丸が肉にめり込むかのような音までも再現されてて…、一瞬声が出そうになりましたね…。また刀で斬られるシーンも同じく、そこにも白石和彌監督のこだわりを感じましたね。
そしてストーリーの運びも中々スリリングで秀逸。本当に周りが敵だらけの四面楚歌な状況下で、上林の視覚的な恐怖感だけではなく様々な心理的恐怖感も同時に味わえるというてんこ盛り…。ヤクザも警察も紙一重でしょうか、この手のノワールでも一番恐怖感を味わった気がします。

原作には無いオリジナルストーリーとは言え、随所に原作へのリスペクトを感じ、そしてちょくちょく小ネタを挟んでくれているのもまた高評価の理由の一つ。
これは恐らく、原作での「孤狼の血」→「凶犬の眼」の間のストーリーになるのではないかなと。日岡もレベルアップしたとは言え、まだまだガミさんには到底及んでいません。ただガミさんのやり方を真似ているだけでは、その域までは及ばない。でも、上林との戦いで更に成長したはず。いつかはガミさんも認める刑事になれるはず。たった一人で抗う姿に、明日を生きる活力を貰った気がします。

上林は日本映画史に必ず残る悪役でしたが、彼にもやはりバックボーンがある。凶悪な悪魔が生み出されたのには、様々な社会問題がありました。ただ残虐非道なヤクザに留まらない、深いメタファーも含まれていましたね。
次回作があるとしたら、「凶犬の眼」を元にしたストーリーになるのかな?次回も必ず観させて貰います。
「あんたさん、もし気になっとるんじゃったら、早めに観に行きんさい。劇場で観る価値のある映画じゃけぇ、満足出来るとわしぁ思うけんのぉ〜。」
是非ぜひ、ご鑑賞ください!