みかんぼうや

孤狼の血 LEVEL2のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
4.2
これはもう余計な理屈や解釈などいらない。凶悪な悪人たちを描かせたら今の邦画界で右に出る者はいないのでは?と思わずにはいられない白石監督の徹底したヤクザ描写と圧倒的演出力に、豪華個性派派俳優たちの極悪演技が掛け合わされたことで生まれた最高の化学反応。本作をもって、「孤狼の血」シリーズは、文字通り、日本邦画史上最凶最高のヤクザ映画シリーズの一つになったと言えるでしょう。

やはり本作の圧倒的な魅力は、鈴木亮平の狂気と極悪ぶり。前作からガミさん(役所広司)や五十子(石橋蓮司)、一ノ瀬(江口洋介)などかなりキャラが立った登場人物たちがごそっと抜けたことで、登場人物的にだいぶ物足りなくなってもおかしくないはずなのに、この鈴木亮平演じる上林(うえばやし)の強烈過ぎる存在感のお陰で、その物足りなさを感じさせません。

しかし、本作の鈴木亮平、本当に化け物。基本的に温かみのある“善玉”役がかなり多く、東京外国語大学卒業で英語がペラペラなうえにNHKの歴史系番組(大河ドラマではなくNHKスペシャル等)にも頻繁に出演し博学ぶりを披露する現在の芸能界きっての超スマート俳優の鈴木亮平。いかにも普段から人が良さそうな彼が、そんなパブリックイメージと究極的に対極にあるこの役柄を、ヤクザ役の手練れとも言える他の大御所俳優たちを完全に食ってしまう凄みを持って演じ切ったことに、彼の俳優としての底知れぬ演技力を感じざるを得ませんね。

私は大河ドラマの「西郷どん」がとても好きだったので、鈴木亮平が演じる、温かく心優しき西郷さんが幕末後半の怒りに満ちた陰を感じさせる西郷隆盛へと変わっていく様子を見ていたので、鈴木亮平の演技の幅の広さはある程度理解をしていましたが、ここまでとは思いませんでした。正直この演技を観るだけでも本作を観る価値があると思います。

松坂桃李の演技も前作からのガミさんスタイルを受け継ぐ刑事役を見事にこなしていて良かったですが、鈴木亮平の存在感には一歩及ばずかな?というのが個人的な印象。

ですが、それほどの鈴木亮平に引けを取らない凄まじい存在感と演技の漢がもう一名いました!滝藤賢一!この男もかなりクレイジー!あまり細かくは書きませんが、前作で片鱗を見せていた抑え込まれた狂気感がさらに露呈され、なんとも魅力的なキャラクターに!彼のことは半沢直樹の1で初めて知ってから好きになりましたが、精神不安定系のキャラがハマり過ぎですね。あの優しそうな喋り口調からのギョロリと見開いた目玉、たまりません(笑)。

ちなみに、今作のほうが1よりやや点数を低めにしたのは、途中から完全に「龍が如く」化してしまったことが理由です(つまり、ゲーム化)。鈴木亮平演じる上林がもはやモンスター設定だったので、1で最高に面白かったヤクザの抗争と警察の闇によるドロドロとした人間ドラマ部分が控えめになり、ド派手なアクションとキャラクター勝負になってしまった分(ラストバトルなどは完全にアクションゲーム(笑))、個人的には1のほうが好みでした。

ただ、このシリーズの安定の面白さはまた続編で観てみたい。あの終わり方であれば十分3は作れそうですが、どうなのでしょう!?
みかんぼうや

みかんぼうや